国民生活基盤としての日本版クラウドコンピューティング2015年に最大100兆円の新市場(2/3 ページ)

» 2009年04月28日 08時30分 公開
[林雅之,ITmedia]

グリーンクラウド・データセンター構想

 クラウドコンピューティングの普及が進めば、データセンターの需要の増加も予想される。MicrosoftやGoogleなどは、世界各地に数千億円規模のコンテナ型の次世代データセンターを建設している。海外においてもアイルランドをはじめとした寒冷地への建設や、水力発電や風力発電を利用し、データセンターの消費電力を低減する取り組みなども本格化している。

 政府もグリーンクラウド・データセンターの整備促進に向けて、寒冷地、風力・太陽光発電などの利用、電力ロスの少ない直流電源や地下空間の利用などを検討している。これらのコンセプトを生かし、霞が関クラウドなどの基盤を支える「霞が関クラウド・データセンター(仮称)」の構築に努めるとしている。

 日本のデータセンターではさまざまな団体の取り組みも本格化している。経済産業省は、2008年12月4日、データセンター事業の国際的な競争力を向上させることなどを目的に、産学官が協力する団体「日本データセンター協会」を設立したことを公表している。総務省においては、2009年2月26日、ASPIC(特定非営利活動法人 ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム)の内部に「ASP・SaaS データセンター促進協議会」の設立を公表している。本協議会の取り組みの中では、「クラウドコンピューティング利用ガイド」の作成の検討も盛り込まれている。

 民間企業を中心に、北海道グリーンエナジーデータセンター(GEDC)研究会が2008年6月16日に立ち上がり、フィルターでろ過した外気や貯蔵した雪による熱交換で作り出す冷気を使ってサーバの消費電力を抑えるといった技術検証や北海道内にデータセンターを誘致する取り組みを行っている。2008年10月16日の中間報告書では、2000ラックのデータセンター規模を前提にした場合、89%以上の冷房用消費電力を削減し、1カ所あたり年間消費電力量で約3万5000MWh(CO2換算で年間約14900t)の削減が可能であると報告している。

 調査会社IDC Japanは2009年4月13日、データセンター・サービスに関する市場調査の結果を公表し、国内のデータセンター・サービスの市場は年平均12.7%で成長し、2012年には1兆2000億円に達するとしている。世界経済危機によるデータセンター市場への影響は比較的小さく、むしろ自社の運用コストを抑えるためにアウトソースの動きが進み、データセンター・サービスの市場は堅調に拡大していくと見ている。

 今後、日本においても、グリーンクラウド・データセンターの本格的な取り組みが展開されていくことが期待される。

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