わが社のコスト削減

クラウドは万能か――富士ソフトの苦悩と解わが社のコスト削減(3/4 ページ)

» 2009年05月19日 08時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

「コンシューマー起点のサービス」が弱点か

 Google Appsなどのクラウド型サービスは導入の初期費用が掛からず、管理をサービスの提供側に一任できるといった利点が注目を集めやすい。だが、その裏には弱点も隠れている。その1つが企業向けサービスとして成熟しているかという点だ。山本氏は「Google Appsはコンシューマーサービスから始まったもの。企業で使うには注意が必要だ」と話す。

 例えば独自のカスタマイズについて自社運用の情報システムに比べて、応用がききにくい点だ。Google Appsの操作画面は簡単なインタフェースと機能で構成されていて、使える機能などは制限されている。トライアルの段階では、従業員からは「使い勝手が(自社のシステムに比べて)良くない」「スレッドしか表示ができない」「同じ件名のメールが集約される」(山本氏)といった不満が挙がったという。

 「あくまでGoogleが提供しているサービスを『使う』という立場だ。独自開発はできない」(山本氏)

 発言の矛先はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)という提供形態にもおよぶ。クラウド型のサービスは、機能強化やバージョンアップがあった場合、オンデマンドで即座にそれが反映されるという利点がある。だがそれが仇になる場面があった。Google Appsを導入しているユーザー企業が新機能を使えるのに、富士ソフトではまだその機能が使えない……。こんなことが実際に起こったという。

 Googleは米国などに複数のデータセンターを運営しているが、経由するネットワークなどによって機能の更新がずれこんでしまうという。「原因は特定できていない」(富士ソフト広報)が、結果としてユーザー企業と富士ソフトの間で利用可能な機能に差が生じてしまった。それがユーザー企業からの問い合わせにつながってしまい、販売代理店としてユーザー企業に機能やサービスの詳細を説明しにくい場面もあったという。


 Google Appsはあくまでコンシューマーサービスから生まれたものである。Google Apps Premier Editionは企業向けに開発されているが、Googleが取り組んできた企業向けサービスの日はまだ浅い。国内の企業がGoogle Appsを導入する場合、「Googleという会社のサービスに対する考え方や提供方法を理解して、社内の理解を得るように働きかけることが必要」(山本氏)になる。

 一方山本氏はこう語る。「社内システムを入れ替えた時には、ユーザーからは使い勝手などの面で必ず不満が出てくる。サービスの特性を理解して慣れていってもらうしかない」。すべてのクラウド型サービスにこの考え方が当てはまるとは言えないが、クラウドの特性をあらかじめ社内に周知しておけば、コスト削減効果など多くのメリットが得られることは確かだといえる。

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