技術者版「AIDMA」でエンジニアーズ・ハイを感じよう「ひらめき力」を向上させよ(3/4 ページ)

» 2009年05月22日 09時12分 公開
[山口陽平(みずほ情報総研),ITmedia]

技術者版「AIDMA」でひらめきを習慣にする

 本田技研工業の「VTEC」と呼ぶエンジンの動作機構は、エンジンに搭載した複数のバルブの開閉を制御することで、高出力・高燃費を実現する。実はこの機構はエンジニアのひらめきから生まれた。そしてひらめきの題材は「焼き鳥」だという。ではそのエンジニアは、どうやって焼き鳥とエンジンを結び付けたのだろうか。わたしの想像はこうだ。

 まず、普段からエンジンに似たものに注意(Attention)を払っておく。ふと飲み屋に行った時に、串に刺した焼き鳥がクルクルと裏返されるのを見て、エンジンのピストンやシリンダーを連想した。串を裏返しているのを注意深く観察すると、網に引っかかった際にネギが回りやすいのに対して肉が回りにくいことに気付き、興味を持つ(Interest)。なぜネギは回り、肉は回らないのか。具の大きさ、重さ、串との摩擦の違いなどが回転の有無を決めるのだろうか。そのメカニズムを知りたくなり(Desire)、よく観察して考える。思考の過程で調べた知識やたどり着いた仮説、原理を記憶しておく(Memory)。ある日、その記憶がひらめきを導きだし、現実のものに昇華される(Action)。

 ホンダには、エンジンの燃焼室内に生じる渦の制御に成功したエンジニアもいた。彼は、洗濯機の渦をつぶさに観察していたそうだ。また、製菓業のロッテは使い捨てカイロを開発したことで知られている。お菓子とカイロは一見すると関連がないように思えるが、これはお菓子を包装するときに封入する酸化防止剤が発熱する現象からヒントを得たという。

 焼き鳥からエンジン技術を思い付くのは極端な例かもしれない。だが、身の回りの事象がエンジニアリングに寄与する例はこのようにたくさんある

 冒頭の問題では、冒頭で紹介したソーセージの詰め方から小さなデータを組み合わせてパケットのペイロードを効率的に使う仕組みを思いつくかもしれない。固定長パケット転送でパケットサイズ以下のデータを送る場合にはダミーデータで埋めるという処理が必要になり、無駄が生じるからだ。反対に、何らかのネットワークプロトコルを真似した機械が食品製造で活躍する可能性も大いにある。

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