富士通がFJBを完全子会社化した理由Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年05月25日 08時55分 公開
[松岡功ITmedia]
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FJBが“ミニ富士通”になる懸念を払拭

 「もっと早く完全子会社にしてもよかったのでは、との見方もあるかもしれないが、今のタイミングになったのは、昨年度から取り組んでいる富士通グループ全体の構造改革が背景にある。今回の動きは、そのための国内の地域における事業の再編だ。今後、グループ経営を強化していくうえで、役割分担を明確にしないと、昨今の経済状況の中でビジネスを拡大することはできないという危機感を強く持っている」

 広西副社長はこう語り、核心である完全子会社化の理由について次のように説明した。

 「富士通にとってFJBはこれまで連結子会社だったので、当然、業績拡大を要求してきた。FJBも上場企業として懸命に業績拡大に努めてきた。そうした中で、両社で顧客を奪い合うケースがあっても、調整しづらい面があり、少しずつギクシャクした関係になっていったところはある。それを放置したままにしておくと、FJBが“ミニ富士通”になってしまう懸念もあった。そうなるとグループ全体としての力を発揮できない。そうならないように役割分担を明確にして、個々の力を足し算で積み上げていけるようにするために、完全子会社化という手法を取った」

 広西副社長が言うように、実は、富士通にとってFJBをどうするかは、ここ数年の懸案事項でもあった。お互いにビジネスを拡大しようと、富士通は中堅市場へ、FJBは大手市場へと営業活動を広げ、顧客を奪い合うケースも少なからずあった。その意味では今回、富士通がFJBを完全子会社化したうえで、富士通グループの中堅市場向け事業を担う中核会社と明確に位置付けたことで、新生FJBは動きやすくなるだろう。

 ただ、少々気になるのは、中堅・中小市場向け事業にとって不可欠なパートナービジネスを、FJBが担うことになった点だ。これまで直接販売を主体としてきたFJBが、“立ち位置”の変わる間接販売をどこまでマネジメントできるかは未知数だ。

 FJBの鈴木社長は、「パートナービジネスでは、パートナーの皆さんに活用してもらえる強力なソリューションを打ち出していけるかどうかが勝負どころ。そのサポートも含めてパートナーにご理解をいただけるよう、富士通グループをあげて尽力していきたい」と決意のほどを語った。

 上場と引き換えに、富士通グループで新たな役割を担うことになったFJB。その新生ぶりに注目したい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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