通信業界のご意見番が訴えるクラウド時代の警鐘Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年06月01日 08時43分 公開
[松岡功ITmedia]
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ITは巨大なエネルギー消費産業と認識すべし

 「IIJはクラウド事業において、インフラに近いところでのサービス展開に注力していくが、インフラといえば忘れてならないのが電力供給不足の問題だ。一方で電力消費量の増大は、地球温暖化問題やコストアップにも直結する。例えばデータセンターでは、運用コストのうち電力消費の割合が6割を占めるのが現状だ。今後、クラウド事業を展開するうえでは、こうした電力に関わる問題にどう対処していくかが重要なポイントになる」

 こう語る鈴木社長は、「IT分野はこれからますます巨大なエネルギー消費産業になっていくことを、私たちは深刻な問題としてしっかりと認識しておかなければならない」と訴えた。

 実は、鈴木社長は電力に関わる問題に以前から警鐘を鳴らしている。ご本人に言わせると「2002年頃から事あるごとに訴えてきたが、あまり相手にされなかった」という。

 筆者が3年余り前にインタビュー取材した際にも、鈴木社長はこんなコメントを残している。

 「IP化が本格的に進展すると、電力供給不足に陥ることは明白だ。例えば、いま都心のデータセンターはどこもいっぱいで、東京・大手町などは電力供給量のキャパシティとしてギリギリのところにきている状況だ」

 「また、データセンターに置かれている1ラックで200ボルト・40アンペアほどのサーバでも、空調を加味すると家8軒分ほどの電力を常時使っている。そう見ていくと、電力に関わる問題は非常にクリティカルなものだ」

 このインタビュー取材時には、電力供給不足が焦点となっていたが、今回の説明会で鈴木社長はそれに加えて、環境対策とコスト削減を電力に関わる問題の重要な要素として取り上げた。

 とりわけ環境対策とITについては、「グリーンIT」というテーマのもとでさまざまな論議や対策が施されている。ただ、クラウド時代を迎えて電力消費のもととなるデータ量は、今後もますます膨れ上がっていくのは明らかだ。そうした時代の節目だけに、あらためて「ITは巨大なエネルギー消費産業と認識すべし」という鈴木社長の警鐘を肝に銘じておきたい。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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