日立、JP1新版を発表――大規模仮想環境での管理性を強化ジョブ起動時間は1/10に

日立の運用管理ソフトウェア「JP1」がバージョンアップ。仮想環境での管理性およびパフォーマンスの向上を果たした。

» 2009年06月02日 15時05分 公開
[ITmedia]

 日立製作所(以下、日立)は6月2日、統合システム運用管理ソフトウェアの最新版「JP1 Version9(以下、V9)」を発表。翌3日より販売開始する。

日立 システム管理ソフトウェア本部 石井武夫 本部長 日立 システム管理ソフトウェア本部 石井武夫 本部長

 経済の低迷により、経営環境が悪化する中、仮想化技術を用いたハードウェア統合とコスト削減に注目が集まっている。だが、仮想環境における運用負荷の削減については課題が残ったままだ。今回のバージョンアップはまさに、仮想環境でのモニタリング強化や、大規模化する企業システムへの対応に主眼が置かれているという。

 日立 システム管理ソフトウェア本部の石井武夫 本部長は「IT投資が頭打ちの中、今年2月のIDCの調査結果によれば、国内運用管理製品市場はプラス成長(年平均成長率4.9%)を堅持している。それだけユーザーのニーズ、期待が大きいということだ」と見通しを述べる。「V9では、複雑化するシステムでの柔軟な運用と、大規模化するシステムに左右されないスマートな運用を目指し、Flexible & Smartをコンセプトに開発した」(石井氏)

 V9の特徴としてはまず、エージェントレスのサーバ監視を可能とする「JP1/Performance Management-Remote Monitor」の製品化が挙げられる。これにより管理者は、集約候補のサーバ群すべてにエージェントをインストールするような作業から解放され、また仮想環境への移行後もエージェントレスでのチューニングを行える。もちろん、より柔軟な監視が必要な用途に備え、エージェントをインストールする従来方式にも対応している。

 また統合管理製品「JP1/Integrated Management」では、物理サーバと仮想マシンの構成情報を自動で取得できるようになった(従来は、管理者が手動で構成情報を入力する必要があった)。これにより、特に大規模な仮想環境での運用負荷を軽減できる。また年内には、物理/仮想環境の構成変更を自動検知し、動的に反映する機能を実装する予定。対応する仮想化ソフトウェアは、現状ではVMwareのみとなっているが、今後Hyper-V、Virtageもサポートするという。

 なお今回、製品ポートフォリオの中核を占めるジョブ管理製品「JP1/Automatic Job Management System(AJS)」は約10年ぶりのメジャーアップデートを果たし、バージョンもAJS2からAJS3となった。各管理者の役割に応じた監視画面を表示することで、例えばデータセンターの管理者はシステム全体のインフラ管理を行い、各拠点の業務管理者は業務の追加・変更手続きのみを担当するといった切り分けが可能になる。また変更したいジョブネットを事前登録することで、業務を止めずに切り替えを行える。

 加えてAJS3においては、操作性の改善はもちろん、ジョブ実効制御や通信処理をマルチスレッド化し、またスケジューラキューをメモリ上で処理することで、パフォーマンスの向上を図った。具体的には前バージョンと比較し、ジョブ起動時間が「10分の1」に短縮されたという(8多重でのジョブ起動時)。日立の実測による性能データを以下に示す。

8多重での実測値

8多重での実測値 表1:パターン1の環境は「CPU:2.53GHz(4コア、2スレッド)×2、OS:Windows Server 2003」、パターン2の環境は「CPU:1.2GHz(8コア、8スレッド)×2、OS:Solaris 10」となる。それぞれ10倍を超えるパフォーマンスが見て取れる

4多重での実測値

4多重での実測値 表2:パターン1および2の環境は、表1と同じもの。多重度を減らした場合でも、それぞれ約6.5倍程度の性能改善が見られる

1多重での実測値

1多重での実測値 表3:パターン1の環境は「CPU:2.7GHz×4(x86)、OS:Windows Server 2008」、パターン2の環境は「CPU:1.6GHz×4(Power6)、OS:AIX 6.1」となる。1多重でも4倍弱の性能向上を示している

 主な新製品については7月31日より出荷を開始するが、稼働プラットフォームにより時期が異なる可能性がある。価格などはこちら

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