Windows 7を無償で手に入れるためにVistaにアップグレードするのを企業にためらわせる要因はほかにもある。Vistaへのアップグレードにより、従業員の生産性維持が難しくなるのだ。
Windows XPはWindows Vistaとは大きく異なる。確かに、Vistaの基本要素はほかのすべてのWindows OSと同じだが、Windows XPでは簡単に見つけられたファイルでも、派手な外観をまとったVistaでは見つけるのが容易ではない。またVistaのUAC(ユーザーアカウントコントロール)機能は、技術に精通した従業員をも尻込みさせるほど厄介な代物だ。企業がWindows Vistaの微妙な差異を従業員に教えるには、かなりの時間を費やさねばならないだろう。使い慣れたWindowsがなくなったことを従業員に説明する必要もある。そして、従業員にまったくなじみのない新OSを使いこなす方法を教えなくてはならないのだ。こういったことは時間がかかる。
時間がかかるのであれば、そんなことをしても意味がない。従業員がVistaを使うのに慣れるころには、Windows 7にアップグレードする時期になって、従業員を再教育しなければならなくなるのだ。このため、7月から10月までの間は、恐らく生産性が低下することになるだろう。昨今の経済状況にあっては、これは受け入れ難いことだ。
また、VistaからWindows 7へのアップグレードという方針を採用することで、ITマネジャーがどれだけの時間を無駄にするかという点も忘れてはならない。新しいPCを調達し、これらを全社の従業員に配布した後でようやく、新OSに関する従業員教育に取り掛かることができるのだ。これが終わったら、今度はWindows 7を注文し、それを全社に配備した上で、また一から従業員教育をしなければならないのだ。まるで悪夢だ。
企業がWindows 7にアップグレードする前にWindows Vistaにアップグレードすることを企業が検討する理由が1つあるとすれば、それはアップグレードパスだ。
Microsoftによると、Windows XPユーザーにはWindows 7へのダイレクトなアップグレードパスは用意されないという。このため、Windows XPマシンからファイルをコピーし、新しいWindows 7搭載コンピュータにこれらのファイルを追加するという作業を余儀なくされるのだ。
しかし既にWindows Vistaをインストールしたユーザーには、ダイレクトなアップグレードパスが用意される。つまりWindows 7をインストールしたときに、Vistaコンピュータ上のすべてのファイルが自動的にWindows 7環境に移行するのだ。これは非常に楽だ。
しかしこれが十分な理由なのかと言えば、もちろんそうではない。
Windowsの新バージョンにアップグレードする時がきた。しかしWindows VistaからWindows 7へのアップグレードが正しい道筋ではない。企業はWindows 7の登場まで待ち、Microsoftからの無償アップグレードオファーは見送るべきだ。
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