自社をメディア化する「Web情報武装」の正体キラーウェブを創る(4) ゴルフダイジェスト・オンライン(2/4 ページ)

» 2009年06月10日 08時00分 公開
[前野智純,ITmedia]

以下の記事は、前野智純著『キラーウェブ 儲かるウェブの裏側』の内容を再編集したものです


「予約」「メディア」「EC」の3本柱で収益を上げる

image GDOトライシクルモデルの仕組み(出典:『キラーウェブ 儲かるウェブの裏側』)

 GDOのトップページは、ゴルフショップやゴルフ場予約など、11のナビゲーションボタン(2009年6月現在)が並んでおり、それぞれの中はさらに細かなカテゴリーに分類されている。一見しただけで、とても一度に閲覧できる情報量ではないことが分かる。

 多岐にわたるカテゴリーを整理すると、大きく分けて「E-Booking」「E-media」「E-Commerce」という3つに分類される。E-Bookingはゴルフ場やレッスン上の「予約」、E-mediaはゴルフに関連する総合的な情報を発信する「メディア」、E-Commerceはゴルフに関連する商品を販売する「EC(電子商取引)」を指す。

 GDOはこれら3つの車輪で動いている。同社はこの仕組みを「GDOトライシクルモデル」と呼び、独自のビジネスモデルとして発展させてきた。ゴルフ愛好家の年齢層は幅広い。そんなユーザーを年齢や性別、初心者/上級者といったさまざまなセグメントに分類し、それぞれにコンテンツを提供している。

 例えばE-mediaのなかには、国内唯一の日本プロゴルフ協会の公認サイト「PGAツアーダイジェスト」や、800本以上のコンテンツを動画で配信する「ゴルフTV」、6400のブログが開設されている「ゴルファーズブログ」、4100以上のサークルが稼働している「GDOコミュニティ」などがある(2007年6月末現在)。

 石坂信也社長は「ネットだからこそ、総合的に情報を提供しないとサービスが満たされない」と述べ、2000年5月の会社設立当初から一貫して「情報武装」戦略を取ってきたことを強調する。

情報量こそネットの強み

GDOコンテンツの分類 GDOコンテンツの分類(同)

 情報武装は、GDOトライシクルモデルの仕組みだけを指すのではない。GDOはWebのコンテンツをさきほど述べた3つとは別の軸でも分類している。それは編集型メディア、CGM(ユーザー参加型メディア)、取引系コンテンツ――である。

 編集型メディアとは、GDOが独自に取材をして編集する試合結果やレッスン系の情報などのコンテンツを指す。CGMとして代表例に挙がるのはゴルファーズブログで、ユーザーによる6400ものブログが開設されている。取引系コンテンツは予約関連やECサイトを指す。同社はメディアだけでなく、これらのコンテンツも徹底的に深掘りしている。

 例えば、GDOサイトで予約できるゴルフ場は、約1500コース(2007年8月現在)に上る。これは予約可能な提携コース数としては日本一の数だ。コース紹介や地図、料金などの基本情報、実際にプレーをした人からのコメントや評価などを掲載し、各ゴルフ場や値段や設備の充実度など9項目を5点満点で評価している。ゴルフ場を探す人にとって、これほど魅力的なコンテンツはない。

 またECの情報も充実させている。例えばアイアンを買い替える場合、ユーザーは値段やスペックだけに興味を持っていない。その商品を使っている人はどう感じているのか、それに類似した商品はあるのかといった情報をできるだけたくさん知りたいと考える。

 同社は新品で約10万点、中古で約50万点の商品を販売している。その膨大な数の商品を、さまざまな周辺情報を含めて徹底的に紹介する。これが情報武装の正体である。Web以外のメディアでは、自力でここまで展開するのは不可能だと言っていい。

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