セキュリティ業界の重鎮が訴えるサイバー犯罪対策Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年06月15日 09時22分 公開
[松岡功ITmedia]
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セキュリティ業界のコラボレーションを訴求

 「先ほど述べた3つのトレンドを踏まえたうえで、今後セキュリティ技術を効果的に適用していくには、まずセキュリティ技術をこれまで以上にシステムやネットワークのインフラに組み込んでいく必要がある。また、ユーザーの投資効果を高めていくためには、個々のセキュリティ技術や製品の機能をそれぞれ向上させていくだけではなく、システム全体として一段と有機的に機能するように連携や統合を図っていく必要がある」

 コビエロ氏は提言の前提条件をこう語ったうえで、「そうした環境を実現していくためには、セキュリティ技術を持つベンダー同士やインフラベンダーを含めてコラボレーションを図り、最適なセキュリティソリューションの提供に向けたエコシステムを構築するべきだ。それが、これからのサイバー犯罪対策をはじめとした高度なセキュリティニーズに対応するうえで、決定的に重要な意味を持つと、私は信じている」と強調した。

 同氏によると、RSAが、ストレージを中心とした情報システムインフラ事業を展開するEMCの傘下へ入ったのも、そうした狙いがあったからだという。そしてRSAのコラボレーション展開は今、EMCを筆頭として、同じEMCグループで急成長している仮想化ソフトのVMware、インフラベンダーとしてのMicrosoftやCisco Systemsと連携を深めており、さらに400社に及ぶセキュリティ関連ベンダーとのパートナーシップを模索しているという。

 代表的な暗号方式である公開鍵暗号「RSA」の生みの親として知られるRSA Security。1970年代半ばに開発されたRSAはその後、暗号技術のデファクトスタンダードの1つとなり、コンピュータ産業史にも刻まれている。そのRSA Securityで1990年代半ばから経営の陣頭指揮を執り、EMCの傘下に入った後もRSA事業を率いるコビエロ氏が訴えるセキュリティ業界のコラボレーション。RSAという独特の“立ち位置”を熟知し、実績を重ねてきた同氏ならではの提言といえよう。

 記者会見の発言では常にクールに見えたコビエロ氏が、「…… 決定的に重要な意味を持つと、私は信じている」と結んだくだりで語気を強めたのが印象的だった。

プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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