ウィジェットが企業メディアとして台頭する時勝ち残る企業のWebプロモーション(2/3 ページ)

» 2009年06月20日 08時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

「ストーリー作り」――ウィジェットを届ける勘所

 ブログパーツの専用サイトには毎月100以上の新規ブログパーツが登録されるなど、ウィジェット市場が活況を見せている。だが裏を返せば、「単純にウィジェットを作るだけの時代は終わった」(竹下氏)ということだ。ウィジェットを配布しても、それがユーザーの手元に届かなければ、マーケティングには生かせない。ソニーが一連の成功を収めたのは、ウィジェットをどのようにユーザーに届けるかについて、戦略的なプロモーションを設計したからだ。

 αのWebプロモーションでは、「気付き」「体験」「参加」というコンセプトに応じたブログパーツを作り、著名なブロガーとの連携も視野に入れた。ウィジェットが口コミで広がるようにプロモーションを作り込むことが必要になる。

 併せて、テレビや雑誌、Webメディアがこぞって取り上げたくなるようなストーリー作りも求められる。ユニクロのWebプロモーション「UNIQLOCK」は、世界最大広告賞などでグランプリを取るほどのインパクトだったが、成功の要因は「UNIQLOCKが完成するまでのストーリーや従業員の思いをメディアが報道したことが大きかった」(竹下氏)。ユニクロがWebプロモーションを仕掛ける理由をメディアの情報を通じて追体験したユーザーは、UNIQLOCKにこぞってアクセスをした。

 「ウィジェットを使ったWebマーケティングは、気付きや体験、参加、そしてストーリー作りという要素を綿密に織り込み、試行錯誤を繰り返しながら、ウィジェットの作り手の意図をユーザーに届けることが主流になるだろう」(竹下氏)

UNIQLOCK UNIQLOCKのイメージ

ウィジェットが企業メディアになる日

 今後は、購買点数や会員登録の増加など、ウィジェットが自社サービスにどう寄与するかを考える企業が増えてくるという。

 その潮流の1つが、ウィジェットをCRM(顧客関係管理)に使うという手法だ。具体的には、ユーザーがウィジェットを立ち上げる頻度や、どれだけ使っているかといった接触時間を追跡し、「ユーザーの利用時間に応じてサービスの案内や特定のURLをウィジェット上に表示する」(竹下氏)といった使い方が想定される。ユーザーの特性に合わせて商品のメッセージを巧みに打ち分けることで、これまでの広告では実現できなかった詳細なターゲティングが可能になる。

 ソニー自身もCRMの取り組みに注力する考えだ。例えばFeliCaを実装したICカードをイベント会場で配布する。受け取ったユーザーが専用のリーダ/ライタを搭載したPCにかざすと、オリジナルのウィジェットや情報が得られる――こういった仕組みを考えている。「ウィジェットをWebだけでなく、実店舗やイベントなどのリアルな場面にもひも付けることで、顧客の満足度向上につながる。(こうした仕組みの)実現にはそれほど時間はかからない」と竹下氏は話している。


 ウィジェットに対する企業の要望は、「どれだけユーザーに配布できたか」という認知度の向上から、「どれだけ人がウィジェットを使ったか」という実用の増加に変化している。αの成功からは、マーケティングツールとしての活用にあたり、コンテンツの精査やPRとの連携などを徹底的に考えておく必要があることが見て取れる。

 インターネット上で情報が溢れ、企業は商品やサービスの情報を届けたいユーザーの囲い込みに苦戦している。ウィジェット特有のPR方法を心掛けておけば、ウィジェットをホームページに代わる「新たな企業のメディア」として活用できる日がくるかもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ