Webと実店舗の共食いを超えた先キラーウェブを創る(6) 良品計画(3/4 ページ)

» 2009年06月28日 08時00分 公開
[前野智純,ITmedia]

メールマガジンとアフィリエイトによるプロモーション

リアルとネットのさまざまなチャネルを使って、お互いに誘導を図る リアルとネットのさまざまなチャネルを使って、お互いに誘導を図る(出典:『キラーウェブ 儲かるウェブの裏側』)

 メールマガジンは読み手の趣向に沿った内容であれば、有効なマーケティングツールになる。そうではない場合は、ユーザー離れを起こす危険性もある。配信許可を取る以前に、内容が読み手に「刺さるか」どうかを考えることが最も重要である。

 MUJI.netメンバーの中でメール配信を許可している数は、2007年6月の時点で、PC版が58万9000人、モバイル数が23万9000人となった。読み手にとっては内容のおもしろさ、有益さが重要だが、これだけの人数の興味を一度に満たすことは不可能である。そこで良品計画では、メンバーを趣向で分類し、できるだけカテゴリ分けした層の興味にあうメールを配信するよう試みている。趣向による分類の中身は、主に(1)購入商品、(2)リーテンシー、(3)フリクエンシーである。

 購入商品とは、消費者が買った商品をカテゴリ分けし、この商品を買った人は、このカテゴリの商品も興味があるだろうというレコメンド(推薦)を行う。

 リーテンシーとは、最終購入からの経過時間を指す。ダイレクトマーケティングにおいては、最終購入からの経過日数が短ければ短いほど、一般的に反応率が高い。

 フリクエンシーとは、特定の期間内における購入回数のこと。これが多ければ多いほど、店舗に対するロイヤルティ(忠誠心)が高い上得意の顧客であると想定できる。

 こうした分類をすることで、ユーザーの反応率は高くなる。趣向別のメール配信はユーザーに「刺さる」が、あくまでも一度購入したことがある人を対象にした施策だ。ビジネスに拡大するには、既存顧客のファン化と新規獲得の両輪を回していかないといけない。

 無印良品ネットストアの場合、新規ユーザーの獲得に当たり、店舗からの導線を考えていることに加え、アフィリエイトも徹底している。現在同サイトにおけるアフィリエイト経由の販売は、新規購入者の約12%に上るなど、重要なプロモーション施策として機能している。

相手が逆立ちしてもかなわない勝負に持ち込む

 ファッション、雑貨、家具、住宅など、無印良品が扱う商品には競合がたくさん存在するが、それらは個別のカテゴリを対象にした競合だ。ファッションならファッション、雑貨なら雑貨とそれぞれのカテゴリに特化した「縦割り」ではなく、幅広い商品に「コンセプト」で横串を指しているのが同社の最大の強みだ。

 現在、ネットストアで販売されている商品は、ウェアやベッド、家具、家電・照明など、約6000点の商品が20種類以上のカテゴリに分類されている。売り上げ構成は生活雑貨が約79%、衣服雑貨が約20%、食品は1%以下だ。

 無印良品ネットストアの成長要因は、その商品力を抜きにして考えることはできない。無駄を省いたシンプルな価値観は、多くの人に受け入れられている。忘れてはならないのは、これらがどこにでも売られている商品ではないということだ。独自のコンセプトで貫かれたオリジナルの商品を「無印良品のコンセプト」で貫き、一気に攻め立てる。「相手が逆立ちしてもかなわないような勝負に持ち込む」(良品計画)ことが、無印良品ネットストアの勝利の方程式だ。

 同サイトのアクセス数は、月間で約5000万ページビュー。訪問者数は500万だ。一人当たり平均10ページを閲覧している計算になるが、これは一般的なECサイトと比べても高い。この数値にも、同社の商品競争力が反映されている。

無印良品のコンセプトを横串で刺す 縦割りのカテゴリではなく、無印良品のコンセプトを横串で刺す。オンラインマガジンMUJI.magも、そのひとつの提案である(出典:『キラーウェブ 儲かるウェブの裏側』)

無印良品の世界観をネットで表現

 2007年6月、同社はオンラインマガジン「MUJI.mag」を創刊した。創刊号のみ25万部を紙で発行し、店頭で告知をした。それ以降はWeb経由で提供している。この狙いは無印良品のコンセプトをより深く表現することで、顧客層を拡大させることだ。通常のWebサイトでは表現しきれない「生活の中の無印良品」という世界観を存分に表現し、これまで商品の触れる機会が少なかった団塊世代や単身世帯にもリーチしていきたいという思いがある。

 ネットとリアルの媒体を駆使し、Webと実店舗を連携させて、どこまで相乗効果を発揮できるか。同社の取り組みは、カニバリゼーションを危惧するほかの企業に対して、1つの方向性を示すものとなる。

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