経営戦略と環境戦略は不可分――富士通 高橋常務理事(前編)日本のCGO(2/3 ページ)

» 2009年07月01日 08時00分 公開
[聞き手:石森将文,ITmedia]

グループに受け継がれる「環境へのDNA」

ITmedia 「環境本部」という部門自体もグリーン・ポリシー・イノベーションに強く関連しているのではないかと思いますが、どのような取り組みをしているのでしょうか。

高橋 富士通の創立は1935年です。1937年、当時の社長である吉村萬治郎は、現在の川崎市に「川崎工場」を設立しました。当時からいわゆる工場らしくない、かなり緑の多い、環境に強く配慮した製造工場として作られたのです。この考え方が、各時代の経営層に脈々と受け継がれています。

 このように企業活動における環境管理を創立当初から進めてきた中で、具体的な組織として1991年に「環境技術センター」を設置しました。これが環境本部の前身です。1992年の「国連 地球サミット(リオで開催)」を控え、世論の環境に対する意識が高まった年でもあります。

 1993年以降、3年ごとに「環境行動計画」を策定し、その達成度を測っています。行動計画には、温暖化や化学物質、土壌汚染といったまさに環境視点のものから、われわれが企業としてどれだけ製品を省エネ化し、環境に優しいソリューションを提供し、また環境貢献活動を行ったかというものまで幅広い目標が盛り込まれます。直近では2007年からの3年間にわたる行動計画を振り返ったところですが、13項目のほとんどを満足した結果になりました。

 その評価はISO14001(環境マネジメントシステム)に則って行います。ISO14001を最初に取得したのは沼津工場ですが、ここではISO14001が規格化される前から、その前身のBS7750を取得していました。現状では海外のグループ会社を含めて、グローバル統合認証を取得しており、国内・海外を合わせた富士通グループ108社がISO14001を取得しています。“ワンポリシー/ワングループ”という姿勢です。

 しかしISO14001も、言ってしまえば“仕組み”にすぎません。それをどう運用していくかということが問題になります。そのためには、社員一人ひとりが環境についての意識を高めなければならないということになります。

グリーンは単なる省エネを超えて

高橋 企業として環境に対する取り組みを進めるには、社内の意識だけでなく、提供する製品自体がユーザーにとって環境価値の高いものでなければいけません。そこで取り組んでいるのが、さきほどのグリーン・ポリシー・イノベーションです。

 最近、“グリーンIT”という言葉がありますね。しかしここで示されるグリーンとは、IT機器の“省エネ”にとどまるものが中心でした。

 われわれにとっての“グリーン”とは、電力だけの問題ではなく、例えば有害物質をまったく使わないなど、真に環境に優しいものと定義しています。そして基準をクリアした製品を、社内的に「グリーン製品」と認定しています。さらにそれぞれのカテゴリーにおいて、業界トップレベルの環境性能を持つと評価された物を「スーパーグリーン製品」と定義しています。従来、これは社内的な取り組みでしたが、昨年から独自のマークを制定し、広告などでもアピールしています。これはユーザー側の環境意識も啓発できれば、という願いによるものです。

 また企業内活動における環境意識を高める目的で、「環境貢献ソリューション制度」という社内制度を定めています。例えば社内研修でeラーニングを導入した場合は、その導入によりCO2排出量を15%以上削減できると認められれば、それを環境貢献ソリューションとして登録できます。2004年から開始し、これまで約160ものソリューションが認定されました。

 とはいえ、環境価値の高いソリューションというものを外販するにしても、その価値をすぐに理解してくれるユーザーばかりではありません。環境負荷を減らすことを目的に、IT機器やソリューションの導入・調達を行うわけではありませんから……。いわゆるCIOの方々に環境価値を理解してもらうこと。この取り組みが必要だと考えています。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ