学生の信念と技術が交錯するエジプト、Imagine Cup本戦が幕開けImagine Cup 2009 Report

技術に込める期待、世の中に変化をもたらそうとする信念――学生が持つ可能性は無限だ。これを技術やプレゼンテーションに昇華し、世界の学生と競い合う技術コンテスト「Imagine Cup 2009」がエジプトで開幕した。

» 2009年07月04日 22時52分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 現地時間の7月3日、米Microsoftが全世界の学生を対象に主催する技術コンテスト「Imagine Cup 2009」が始まった。本大会の会場であるカイロのホテル「InterContinental Cairo CityStars」から車で30分ほど走ったCitadelの屋外――。20時を過ぎ、夕闇が夜に姿を変えようとする中、本大会のテーマカラーである紫と青色のライトアップで彩られた特設ステージで、開会式が幕を開けた。

 ステージの袖から、124の国や地域の学生が、1国ずつ、たたみけるように入場する。走りながら全身を使って喜びを表現する学生、国旗を両手で掲げて入場する学生など、活気に満ちあふれる彼らの一挙手一投足が会場の熱気をさらに盛り上げる。「Japan」という呼び声が会場に響き渡り、日本代表が登場。ゆっくりと、そして着実に歩みを進め、ステージ前の席に向かっていった。

 開会式ではImagine Cupを率いるMicrosoftの関係者が次々に登壇。力強いパフォーマンスとともに「主役は誰でもない、君たちだ!」と学生を鼓舞する姿からは、このイベントに懸ける意気込みが伝わってきた。学生の一人からImagine Cupに対する感謝の言葉が投げ掛けられると、会場は一体になって喜びをあらわにした。

最高潮の盛り上がりを見せた開会式 「主役は君たちだ」との語りかけに対し、学生たちは歓喜の渦に。最高潮の盛り上がりを見せた開会式

学生を動かす理想への信念

 現地時間7月4日の早朝、日本代表が出場するソフトウェアデザイン部門や組み込み開発部門などの一次予選がスタートした。それと並行して、Imagine Cupのいきさつや今大会の狙いを伝えるプレスカンファレンスも開催された。

 登壇したのはMicrosoft 教育部門を担当するジョー・ウィルソンシニアディレクターやチーフソフトウェアアーキテクトのレイ・オジー氏など。昨晩の開会式で両氏が見せた高潮ぶりとは打って変わり、落ち着いた面持ちでImagine Cupが目指すべき目標などを語った。

 ともに言及したのは学生の可能性。ウィルソン氏は2003年から続くImagine Cupが築き上げてきた道のりを振り返りながら、「Imagine Cupに参加している学生は将来のテクノロジーを担い、将来はCIO(最高技術責任者)やCEO(最高経営責任者)になる。ベストの中のベストだ」と力強く語った。

 オジー氏は、GoogleやYahoo!など、現在のIT業界をけん引する企業が学生によって作り上げられたことに言及。学生について「技術の可能性を信じ、常に世の中に変化をもたらしたい理想をかなえたいという強い信念を持っている」と表現。現実にしばられない方法で自らのアイデアを形にしようとする姿勢に讃辞を送っていた。

ジョー・ウィルソン氏とレイ・オジー氏 学生の可能性を伝えるのに熱がこもるジョー・ウィルソン氏(左)とレイ・オジー氏

安堵の表情でプレゼンテーションを終えたNISLab++

 競技の1日目となった現地時間の7月4日。Imagine Cup 2009で最多となる67チームが参加するソフトウェアデザイン部門の一次予選も始まった。会場には十数人が入れる部屋が複数用意されており、学生たちはそこでソリューションの発表とデモンストレーション、そして質疑応答を行う。

 各国代表の発表が加熱したせいもあってか、同部門に出場する日本代表の「NISLab++」の発表は1時間ほど開始が遅れた。だが発表を直前に控えた準備時間には、冗談を言いながら各自が笑顔を見せるなど、のしかかるプレッシャーをはねのけようとする姿が見て取れた。

 NISLab++のプレゼンターである前山晋哉くんがほかのメンバーを紹介し、発表がスタート。最初こそ固さが見えたものの、徐々に本来の流ちょうなプレゼンテーションを取り戻していった。「教育は貧困を低減させるカギになる」と今回の発表の骨子を力強く語り、電子教科書を配信するプラットフォーム「PolyBooks」を審査員に披露した。

 ここでPolyBooksの詳細を紹介しておく。これはインターネット上に散在する教科書関連のコンテンツをまとめ、学年や科目に応じて自動的に分類をする電子教科書のプラットフォームだ。「言語グリッド」を使ってコンテンツを翻訳し、PolyBooksのアプリケーションからネット経由で使えるようにする。電子化したコンテンツにコメントを付けることも可能で、既存の教科書に独自の解釈を加えて共有するといった用途が考えられる。100ドルPCでの利用を想定しており、「教科書不足で7000万人もの子どもが初等教育を終えられない」(NISLab++)という現状を、教科書を配布するよりも安価に解決できるという。

 質疑応答の場面では序盤こそそつなく受け答えをしていたが、「(ゲームパネルなどの)デバイスや機器と連携した時に、ソリューションは動くのか」といった想定外の質問も出た。その場でメンバーが答えを練り、「Webの標準に準拠したテクノロジーを採用しているため問題ない」と切り返すなど、スムーズに発表を進行した。

 「時間はほぼジャスト」とメンバーが話すように、予定時間の数秒前に発表を終えた。デモ終了時には予定時間を1分ほど超えていたが、その場で軌道修正を図った。Imagine Cupではプレゼンテーションそのものが評価の対象になる。7月1日に日本で開催されたImagine Cupの壮行会での発表よりも話すスピードに余裕を持たせるなど、持ち前の底力を発揮して、難局を乗り越えていた。

 発表後のメンバーは安堵の表情を浮かべていた。ソフトウェアデザイン部門は、1次予選、2次予選を経て、決勝戦が行われる。ファイナリストとして舞台に上がれるのはわずか6組。NISLab++のメンバーは一次予選で敗退した昨年の雪辱を掲げ、数時間後に発表される1次予選の通過者の知らせを待つ。

(Imagine Cup 2009、日本代表の一次予選の結果はこちらをクリック

一次予選終了時のNISLab++ 一次予選終了時のNISLab++の面々。大役を果たしたことへの安心からか、各自は安堵の表情を浮かべていた

世界中の学生がテクノロジーを駆使して社会問題に立ち向かう「Imagine Cup」。バックナンバーはこちらをクリック


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