米国デジタルサイネージ事情――トレンドを追うデジタルサイネージ最前線(2/4 ページ)

» 2009年07月19日 08時00分 公開
[榎本瑞樹,ITmedia]

米国のデジタルサイネージ事例

 市場の拡大に期待が懸かるデジタルサイネージだが、ユーザーの視点から見た米国の事例を紹介しよう。

ニューヨークのイエローキャブ

 ニューヨークを走るタクシーの「イエローキャブ」は、後部座席にタッチスクリーンを設置している。三大ネットワーク局ABCのニュース番組を始め、ビジネス、スポーツ、天気予報などのコンテンツを視聴できる。また画面上にはGPS(全地球測位システム)とGoogle Mapを連動させた地図を表示する。画面を触れると、乗車場所からの移動ルートやレストラン・ガイドブックのZAGATをオンラインで表示できる。観光客には嬉しいサービスだ。

 このディスプレイはタクシー料金の支払いにも使える。クレジットカードを専用端末にスキャンした後、チップを選択してOKボタンを押すだけでいい。英語が苦手な人でも支払いがしやすくなっており、世界中から観光客が訪れるニューヨークのイエローキャブにとって、切っても切り離せないサービスだ。

イエローキャブのデジタルサイネージ(1)イエローキャブのデジタルサイネージ(2) イエローキャブのデジタルサイネージ

ガソリンスタンド

 ボストン郊外のガソリンスタンドでは、燃料給油機に屋外用の液晶ディスプレイが設置されている。家電量販チェーンのBest buyやAmerican Express Internationalの企業コマーシャル、渋滞情報などが流れている。これらはDOOHメディアを提供するAdteck Mediaが運営する「Pump Top TV」と呼ぶネットワークを介して、全米550店舗、6000台以上のモニターに配信しているという。

 米国のガソリンスタンドの多くがセルフ給油式であり、給油している間は意外と手持ちぶさたになる。ある調査によると、ドライバーの7割が週平均1.5回足を運び、平均6分ほど滞在する。こうした顧客の心理をすくい上げ、すき間時間を有効活用できるガソリンスタンドは、車社会が浸透している米国では格好のロケーションといえる。設置している店主も「(導入により)毎月100ドルの収入を得ている」と話し、効果を認めていた。デジタルサイネージが収益をもたらすビジネスとして貢献している。

ガソリンスタンドのデジタルサイネージ(1)ガソリンスタンドのデジタルサイネージ(2) ガソリンスタンドのデジタルサイネージ

エンターテインメント・レストラン

 シリコンバレーで思わず立ち止まってしまったのが、uWinkというレストランだ。入口には「Food」+「Drink」+「Media」という表示があり、店内の各テーブルに設置されたタッチパネル端末を黙々と操作しているお客さんで溢れていた。画面に表示された写真付きのメニューから注文を送ったり、クレジットカードで決済したりできる。

 タッチパネル端末にカードをスキャンすると、ウェイターが「いらっしゃいませ、○○さん」とファースト・ネームであいさつをしてくれる。カード情報がリアルタイムに反映されているのだ。この端末を通じて、店内のスクリーンに映し出されたオンラインゲームに参加するとも可能だ。このレストランはゲーム産業の父と呼ばれたNolan Bushnell氏が創業したこともあり、顧客を飽きさせない工夫が随所に盛り込まれている。

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