コラム
» 2009年07月24日 16時31分 UPDATE

IT Oasis:「明智小五郎の推理力」を読み解く――問題解決の方法

問題解決の方法として、さまざまな思考法がある。MECEもその1つだが、実際に役立てるには使い方を熟知することが大切だ。

[齋藤順一,ITmedia]

呪文を解読する明智小五郎の推理力

 推理小説の大家、江戸川乱歩の明智探偵と少年探偵団シリーズに「怪奇四十面相」という作品がある。K-20がパワーアップしたのが四十面相だ。

 西洋館の地下室で、三人の黒法師が、めいめいが持ち寄った黄金のドクロの呪文を解こうとしているのを明智探偵の助手の小林少年が見てしまう。「ゆなどき、んがくの、でるろも」と1人が言うと、別の1人が「むくぐろ、べへれじ、しとよま」と言い、さらにもう1人が「とだんき、すのをど、すおさく」と言う。それらを組み合わせると、黄金のドクロの秘密が解け、莫大な金塊が手に入るというお話である。

 しかし、3人がいくら考えても呪文は解けない。

 そこに明智探偵が登場して、実は黄金のドクロは3個ではなく、4個なのではと推理し、一計を案じてもう1つを探し出し、無事に呪文を解読するのである。話はまだ二転三転するのだが、ここで興味深いのは、「呪文の意味が解けない理由は、実はドクロが足りないからなのでは」と推理するところである。

「漏れなく、重複なく」という思考法

 ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングでは思考法としてMECEが使われる。

 MECEとはMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字で、相互に排他的で余すところのない集合のことである。日本では「漏れなく、重複なく」と訳されることが多い。ミッシー、ミーシーなどと呼ばれる。MECEはコンサルティングファームのマッキンゼー社が考案したが、名付けたのは一般事務員であるとも言われている。

 現状分析や調査項目の抽出、層別などで、要素を網羅的に抽出したり、対象を構造的に把握したりするときにMECEを考慮しろといった形で使われる。漏れなく、重複なくの例として、以下のような図をセミナーなどでご覧になった方も多いのではないだろうか。

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 大抵のセミナーでは、物事を考えるときには、重複のないように、漏れがないように注意しましょう、論理的に考えましょうとアドバイスされる。なるほど、MECEは大事だねとは思っても、それでは具体的にどうすればいいのかとなると、よく分からない方が多いのではないか。それは当然である。MECEはスローガンであって、フレームワークではない。MECEは結果が出た後に漏れがあるとか、重複があるとか論じるときには有効な考え方である。

 実行途中では全体像は分からないし、集合にどのような要素が存在しているかも定かではないのである。それではMECE的なアプローチはどうすれば実現できるだろうか。

MECEの使い方

 MECEを上手に使う方法を紹介しよう。

(1)イシュー(論点)を明確にしておく

 イシューもロジカル・シンキングでは定番のフレームワークである。命題とか論点と訳される。何についてMECEの考え方を適用するのか明確にし、参加者の合意を得ておくことである。またMECEを使って対象を分析するにあたっては、そのような行動には何かの意図や目的があるということを明らかにしておこう。さらに、分析者と対象の関係、分析者の立ち位置も明らかにしておく。

(2)言葉を定義する

 論理的な分析では言葉の意味を定義しておくことが重要である。

 「旅行には国内旅行、海外旅行がある」

 これはMECEで完全のようであるが、海外という言葉の定義をしておく必要がある。

 海外を文字通り海の外と解すると、

 「旅行ですか」

 「チョット海外へ」

 「どちらへ」

 「佐渡島」

 といった笑い話になるし、海外とは日本国外であると定義したら、北方領土や竹島に旅行に行くときはどうするのかといったことになる。

(3)意味のある「場合分け」をする

 MECEの基本は漏れなく、重複なくであるが、重複がなければよいというものでもない。 例えば10代、20代…といった年齢による分類は重複も漏れもないが、こうした分類で意味ある分類結果が得られるケースというのはあまりないだろう。

口紅を売るのであれば、女子高生、大学生、未婚のOL、子どものいない既婚者…といった場合分けの方が層別としては妥当だろう。世の中には大学生かつ子どものいない既婚者といった女性もいるだろうから「重複なく」は満足していないが、大切なことは意味ある分類であって、完全に重複を排除することではない。

(4)仮説思考をする

 仮説とは仮の結論である。全容が明らかになっていない状態で、仮の結論を考えておいて、それを検証することである。それが十分もっともらしかったり、否定できなかったりすれば、仮説を解として受け入れるのである。明智探偵が、実はドクロは4個ではと考えたのが仮説思考である。

(5)自分なりの型を持つ

 これが最も重要である。対象とする集合は全体も要素も分からない。そこで、自身で熟知している参照モデルやフレームワークを使って、対象を分析していくのである。例えば犬について分析するとしよう。もし、あなたが猫を飼ったことがあれば、猫にはこんな特徴がある、猫ではこういう体験をした、といったことを知識や経験で持っているはずだ。その知識や経験をベースに、犬には当てはまるのだろうかと追究していくわけである。

 MECEに限らないが、コンサルタントやITの上流工程を担当する人は自分流の型を持たなければならない。

 明智探偵が、宿敵の怪奇四十面相から手に入れた最後の呪文は「ゆるのり、んなさと、でんがざ」であった。あなたは黄金のドクロの呪文を解いて、金塊を手に入れることができますか?

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プロフィール

さいとう・じゅんいち 未来計画代表。NPO法人ITC横浜副理事長。ITコーディネータ、CIO育成支援アドバイザー、上級システムアドミニストレータ、環境計量士、エネルギー管理士他。東京、横浜、川崎の産業振興財団IT支援専門家。ITコーディネータとして多数の中小企業、自治体のIT投資プロジェクトを一貫して支援。支援企業からIT経営百選、IT経営力大賞認定企業輩出。


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