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» 2009年08月19日 14時05分 UPDATE

オープンソースソフトウェアの育て方:OSS開発、“はじめの一歩”で抑えておくべきポイント (1/5)

オープンソースの開発で最も困難なのが、はじめの一歩です。なぜなら、今後の方向性に関する先例もなければ今後どのようになっていくのかもまだはっきり分からないからです。ここでは、プロジェクト開始時に抑えておくべきポイントについてまとめました。

[Karl Fogel, ]

うまく引っ張っていく

 ここまで取り上げてきたのは、プロジェクトの立ち上げ時に一度だけ必要となる作業でした。ライセンスの選択や最初のWebサイトの作成などです。しかし、プロジェクト開始時に最も大切なのは、それ以外の動的な作業です。メーリングリストのアドレスを決めるなんていうのは簡単なことです。でも、そのメーリングリストでのやり取りを有益で前向きなものに保つのはそれとはまったく別の話となります。これまで何年にもわたって社内の閉じた環境で開発が進められてきたものをオープンにすると、その開発プロセスはこれまでとは変わります。これまでの開発者たちに対して、その変更に対応できるよう準備させなければなりません。

 最も困難なのが、はじめの一歩です。なぜなら、今後の方向性に関する先例もなければ今後どのようになっていくのかもまだはっきり分からないからです。プロジェクトの安定性は、形式張った方針からくるものではなく、開発者の間で徐々にできあがっていく集合知によってもたらされるものです。そして、これはしっかり取らえにくいものです。明文化された規則があることもありますが、それはたいてい、プロジェクトを本当に動かしているこれらの無形の合意をまとめ上げたものにすぎません。明文化された方針によってプロジェクトの文化を定義することはできませんし、それに近づくことさえできません。

 このようになるには、幾つかの理由があります。成長と変化の速さは、人が考えるほどには文化の蓄積に影響を与えません。変化の速度があまりにも高速にならない限り、新入りさんがそれを学ぶ時間はあります。そして学び終えた後は、自分自身でそのやり方を補強してくれるでしょう。童謡が、いったいどのようにして何百年も歌い継がれるようになったのかを考えてみましょう。現在の子どもたちが歌っている童謡は、基本的には数百年前の子どもたちの歌っているものと同じです。もちろん、昔の子どもたちが童謡を歌っていたころには現在の子どもたちはまだ産まれていません。子どもたちはその歌を年長者から聞いて覚えます。そして子どもたちが成長すると、年少者の前でそれを歌って聞かせるわけです。もちろん、子どもたちは意識的にそうするよう指示されているわけではありません。しかし、何百年も同じ歌が歌い継がれているという事実は、このような伝承が常に繰り返し行われていることを示しています。フリーソフトウェアプロジェクトの歴史が今後何百年も続くかどうかは分かりません(どうなるかはまだ分かりません)が、この仕組みは似たり寄ったりでしょう。しかし、その回転率はより高速になるので、より活発かつ慎重に伝承を行うようにしなければなりません。

 この動きは、人が基本的に社会規範を求めているという性質があるので成功しやすくなります。それこそが人が存在する理由なのですから。一般的な方法でまとめあげられた集団なら、そこに参加しようとする人々は本能的にその集団の一員として振る舞うためのやり方を見つけようとするものです。より早い時期に先例を確立するには、そのプロジェクトに役立つ「グループとしての」振る舞いを作ることです。いったんできあがってしまえば、後は勝手にそれが広まっていきます。

 以下に示す幾つかの例は、よりよい先例を作るためにできる具体的なことをまとめたものです。これだけを行えば完全だというものではありません。単に、「早いうちに協力的なムードを作り上げておくとプロジェクトを運営しやすくなりますよ」ということを説明するためだけのものです。物理的には、個々の開発者がそれぞれ別の場所で作業をしているのかもしれません。しかし、まるで同じ部屋で一緒に開発しているかのように感じさせるために、いろいろなことができます。彼らがこのように感じてくれればくれるほど、プロジェクトに対してより時間をさきたいと思うようになるでしょう。以下の例は、Subversionプロジェクトから選びました。わたしは、開始当時からこのプロジェクトに参加しています。しかし、これらの例は決してSubversion独特のものではありません。同様の状況は大半のオープンソースプロジェクトで起こり得るでしょう。また、プロジェクトに片足を突っ込む際には意識しておく必要があることばかりです。

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