日本のICTインフラは世界No.1―― そう言われても首を傾げたくなる読者諸氏も少なくないだろう。実はその要因も比較評価レポートから見て取れる。
図をご覧いただければお分かりの通り、携帯電話普及率が21位、インターネット普及率が12位、ブロードバンド普及率が15位と低く、国民全体がICTの恩恵を受けているとは言い難いのが実情だ。
この普及率向上に対し、総務省も「とりわけデジタルデバイド解消へ向け、2010年度までにブロードバンド・ゼロ地域を解消するといった取り組みを引き続き推進するとともに、有線・無線の別を問わず、世界最先端のデジタルネットワークの構築を推進することが必要だ」としている。
さらに比較評価レポートからは、もう1つ日本にとって重要な課題が浮き彫りになった。図にあるように、ICT投資割合が13位にとどまったことだ。
このICT投資割合は、国際調査研究機関であるIMDの2006年度のデータを基に、各国・地域のICTに関する官民を合わせた投資の国内総生産(GDP)に占める割合(GDP比)と偏差値を算出したものである。
それによると、1位はスイスでGDP比1.35%(偏差値80.3)、2位は韓国でGDP比1.15%(偏差値73.2)、3位は中国でGDP比0.99%(偏差値67.5)となり、日本は13位でGDP比0.41%(偏差値46.7)と大きく水をあけられた格好となった。しかも日本は前回の12位から順位を1つ下げた。
ICT投資割合は、見方によっては他の11項目の先行指標ともいえる。この結果を受けて総務省も、「日本のICTインフラがこれからも世界最先端であり続けるためには、社会基盤としての優先度の向上を図るべくICTインフラを社会資本として重視し、将来の情報化の進展を踏まえた社会資本整備や資源配分の見直しに取り組むとともに、あらゆる産業・社会分野においてICTの利活用を推進することが必要だ」としている。
総合評価では世界No.1を堅持した日本のICTインフラ。ただし、普及率や投資状況を重視すれば、その国際競争力は何とも心もとない。官民をあげての一層の取り組み強化が求められるところだ。
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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