藤田 先日、堀江さんと、2ちゃんねるのひろゆきさんの3人で話をしたのですが、引け目を感じてしまいました。敵わないなあ、みたいな(笑)。技術を知っているかどうか、自分で作れるかどうか、というところで越えられない壁があるような……。
有馬 だからこそ、サイバーエージェントが成功したんじゃないですか(笑)
藤田 そうですかね? でも昔の自分のような、営業マインドは薄くなったかもしれない。それよりもウェブサービスの企画・開発の役割が大きくなりました。まあ、社長兼業ですけれど。
有馬 社長のほうが“兼”なんですか(笑)。
藤田 いや、もちろん社長業がメインです(笑)。言い直すと、これまでは技術もデザインも、以前のオン・ザ・エッヂのようなパートナー各社の協力を受けていた。僕としてはきちんとそれを吸収し、「自社で作ったサービスである」と考えていたけれど、今にして思えば表面的に過ぎなかったかもしれない。技術者の採用を行い、自社で開発できる技術者やデザイナーがいる環境下にあることで、自分なりに納得できるウェブサービスが作れるようになってきました。Amebaを開始した2004年から、5年にわたり、ウェブサービスの開発に力を入れています。
有馬 それは、これからも?
藤田 今のところは、そうです。社内のミーティングもそればっか。ウェブサービスで、一発当てたいですよね。あるあるネットのような(笑)。
有馬 Amebaが当たったじゃないですか!
藤田 “いいところ”まで来ましたね。将来大きく利益を上げる事業としての可能性が見えてきました。執念かもしれません。
有馬 執念、と言うと?
藤田 だって、どこも止めてしまいましたよね? ブログサービスを発展させることは。われわれからすると“ありがたい”とも言えますが。先行投資を続け、まずはサービスを大きくすることに専念してきたAmeba事業ですが、“赤字だ赤字だ”と報道されたため、どこもマネしないですよ(笑)。
有馬 よほどの体力がないと難しいですよねえ。
藤田 というか、その前に“やりたくない”んじゃないですか(笑)。
ITmedia ウェブサービスで当てる、というお話がありましたが、中でも注力したいものは?
藤田 アメーバピグですね。簡単に説明すると、仮想空間の中で自分に似せたアバターを作って、ほかのユーザーとコミュニケーションができるというもの。とてもライトなセカンドライフ、と言うとわかりやすいかもしれません。こういうサービスで、FLASHで作られていてブラウザ上で軽く動く、というものって意外となかった。
有馬 任天堂Wiiの“Mii”のようですね。あちらも盛り上がっている……。
藤田 やっぱり、自分に似ていると、手を掛けたくなるんじゃないでしょうか。アメーバピグ上の自分は、かわいいいし、洋服を着せ替えて贅沢だってしたい、みたいな(笑)。アイテムは現代的なものだけでなく、タイムマシンで原始時代に行けば、原始時代の服を買えたり、バブル時代に行けばボディコンの洋服や扇子も買えます。あと、そこで踊りを教えてもらえます。“火山の噴火の舞”や“パラパラ”とか(笑)。自分の部屋に、友達が遊びに来ることもあります。
有馬 それは、確かに豪華にしたくなるかも。
藤田 噴火の舞もそうですが、ピグには現場の開発エンジニアが自発的に仕込んた裏技が、いろいろ隠れています。でも、そういう遊び心って大切だと思います。ネット企業も大きくなると、立派なビルに入っておとなしくなりがち。そうなると、面白いことや自由な発想ができなくなってしまうと思うんです。
有馬 活動の元になるエネルギーって、なんですか?
藤田 仕事はムキになってやっていますけど……。その源泉が何かと聞かれると、難しいですね。例えば何でこんなに、Amebaを流行らせようとしているのか。自分が言い出した、始めたことだし、やっぱり執念かもしれない。最後は、責任とプレッシャーですね。
有馬 じゃあ、10年後の自分って、どうなっていると思います?
藤田 10年後、というと45、6歳かな。分からないなあ。もしかしたら引退、なんてこともあるかもしれない……。さすがにないかな(笑)。
「取材時、10年後のことは分からない」とお話しいただいた藤田さん。ですが程なくしてご結婚の報告が! おめでとうございます。
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