SaaS市場をアプリケーションのカテゴリごとに分類すると以下の比率となる。
カテゴリー | 比率 |
---|---|
情報系 | 31.0% |
フロントオフィス系 | 22.1% |
バックオフィス系 | 16.3% |
その他(業種特化、特定用途向け、セキュリティ) | 30.6% |
SaaSカテゴリ比率(2008年度)(出典:富士キメラ総研『2009 SaaS/PaaS関連市場の現状と将来展望』)
2008年度時点では、グループウェアや電子メール、Web会議、e-ラーニングなどを含む情報系アプリケーションの普及が市場全体の30%強を占め、最も高い比率となった。以下、SaaSの代表的なアプリケーションであるCRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援)などフロントオフィス系が続く。従来からASP(ソフトの期間貸し)として利用者を獲得していたグループウェアやWeb会議のソリューションをSaaSとして提供する動きが出てきたことで、大手企業から中堅、中小企業まで業種を問わず需要を獲得している。これがSaaSの市場規模を拡大するエンジンとなっている。
また、データを外部に預けることへの不安から利用が進まないとみられていたバックオフィス系のSaaSアプリケーションも、市場が徐々に立ち上がりつつある。現状ではグループ企業の子会社や大手企業の事業所単位、システム構築が困難な中小企業での利用が中心だが、今後はパッケージソフト利用からの入れ替え需要による市場拡大も見込まれる。
今後も情報系/フロントオフィス系の市場が堅調に拡大する。またウイルス対策を中心としたセキュリティ関連の市場でも、情報管理を目的としたサービスの需要拡大により、著しい成長が見込まれるだろう。
市場の拡大が見込まれるSaaS/PaaS市場では、利益の確保をめぐり、さまざまな事業者が相次いで市場に参入し、事業を本格的に展開し始めている。事業者ごとに事業への取り組みやスタンスは異なっており、各事業者の特徴をまとめると以下になる。
カテゴリー | 取り組み、事業スタンス |
---|---|
SaaSを展開する専業事業者 | 2000年前後からASPとしてビジネスを開始した事業者が数多くあるほか、セールスフォース・ドットコムを筆頭に外資系ベンダーも多く市場に参入している。 |
SaaSを展開するパッケージベンダー | SaaSが企業ユーザーの選択肢として定着する中で、データセンターを活用し、既存のパッケージ製品をSaaSとして展開するベンダーが増加している。既にパートナー企業を通じた販売チャネルを構築しており、SaaSを新たな販売チャネルの1つとして位置付ける企業が多い。 |
SaaSを展開するシステムインテグレーター | 企業ユーザーの要望に対応するために既存のシステムをSaaS化して展開している場合が多い。汎用サービスだけでなく、業種特化型のサービスも提供している。現状ではシステムインテグレーション事業を補完するビジネスとして展開している場合も多く、SaaSの位置付けが低い事業者も多く存在している。 |
SaaSを展開するインターネットサービスプロバイダー(ISP) | 中核事業のポータルサイト運営、Webシステム構築・運用のノウハウを基にしたWeb系サービスを展開している。 |
PaaSを展開するコンピュータベンダー、システムインテグレーター、データセンター事業者 | 大手コンピュータベンダーやシステムインテグレーター、データセンター事業者が自社のデータセンターを活用したPaaSを展開している。事業形態は、パッケージベンダーへのSaaS基盤の提供、エンドユーザーへのPaaS基盤の提供、という2つに分類される。 |
PaaSを展開する通信キャリア | ネットワーク回線を保有するという強みを持っており、セキュアなサービス環境や、広帯域バックボーンによる信頼性の高いサービスをプラットフォーム上で展開できる点が差別化要素となっている。 |
多くの事業者がSaaS/PaaS市場に注力しているが、参入事業者が増加したことでサービス間の競合が激化している。今後はアプリケーションの機能面やユーザーが安心してサービスを利用できる環境面の向上、安価なサービスを効率的に拡販する販売体制の確立が求められる。
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