ASP・SaaS白書にみるクラウド市場の新勢力Weekly Memo(1/2 ページ)

ASPICがこのほどまとめた「ASP・SaaS白書2009/2010」によると、クラウド市場への新勢力の参入が目立ってきた。果たして何を示唆する動きなのか。

» 2009年08月31日 06時09分 公開
[松岡功ITmedia]

国内企業のASP・SaaS普及率は17.5%

 特定非営利活動法人ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)がこのほど、財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)の協力を得て、「ASP・SaaS白書2009/2010」を発刊した。

 2003年、2005年に引き続き3回目の発行となる今回のASP・SaaS白書は、副題を「クラウドコンピューティング時代の主役へ」とし、進化を続けるASP・SaaSの実態、動向を明らかにしている。

 ASPICは先週28日に開いた記者会見で、その内容について説明した。いくつか興味深い調査結果が示されているので紹介しておきたい。ちなみにASPICでは、クラウドコンピューティングを「ASP・SaaSの集合体」と定義付けている。したがって、以下の調査結果もそれを踏まえてみていただきたい。

 まず、ASPICの推計によると、2009年のASP・SaaS関連の市場規模は約1兆円。このうち75%は、データセンター市場(ハウジング、ホスティング)が占める。

 今後は、現状で25%のアプリケーション市場が急速に拡大していくと予想され、2015年頃にはアプリケーション市場がデータセンター市場と拮抗するようになる。その結果、ASP・SaaS関連の全体市場規模は、2012年に2兆円規模、2015年には3兆円規模に拡大するとしている。

 利用者動向としては、現在の国内における企業のASP・SaaS普及率は17.5%に達しており、従業員5人以下の企業を除くと30%にまで至っている。しかも利用者の60%弱は継続利用を強く考えており、ASP・SaaSの本格的な普及が体感できる状況になってきたとしている。

 アプリケーションのタイプからみると、特にグループウェアなどの支援業務系アプリケーションの普及率(19.3%)が高く、経理・会計、営業支援などの基幹業務系アプリケーションの普及率(11.4%)も着実に伸びている。

 企業の規模別では、現状では基本的に大企業の方が中小企業よりも、ASP・SaaSの利用割合が高い。基幹業務系アプリケーションにおいては、生産支援、CRM、営業支援などでその傾向が顕著に出ている。

「ASP・SaaS白書2009/2010」を携えて記者会見に臨むASPICの河合輝欣会長

 一方、支援業務系アプリケーションについては、大企業と中小企業の利用割合に大きな差がない。つまりASP・SaaSは支援業務系アプリケーションを中心として中小企業にも浸透しており、中小企業が大企業と対等なICT環境のもとでの市場競争機会を獲得できる環境が整いつつあるとしている。

 そして利用者がASP・SaaSを導入するメリットとしては、「安全・信頼性の確保」「コストの直接的削減」「迅速かつ自由度の高い経営」「事業・売り上げの拡大」「市場競争条件の改善」といった5つが挙げられるとしている。

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