変わるLotus Notes、変わろうとしている日本企業e-Day

いま日本企業は、生き残りを賭け、これまでにないほど迅速な製品やサービスの市場投入に躍起だ。かつてライバルらから死刑宣告を受けたLotus Notesだが、階層的な組織や働き方を変えたいと考えている企業の経営層にはどのように映るのだろうか。

» 2009年09月04日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「Notesは死んだ」── 1990年代半ばだったろうか、かつてインターネットの普及とWebの爆発的な膨張が始まったころ、コラボレーションに求められるさまざまな機能を独自の製品としてパッケージングしていたNotesは、それゆえにライバルらから「死刑宣告」された。しかし、環境の変化にも上手く適応できたのだろう。Lotus Notes/Dominoは、今年で20周年を祝うばかりでなく、IBMが提唱する新たなビジョン、「Smarter Planet」でも極めて重要な役割を担っている。

 地球環境に優しい経営の重要性は日に日に増している。身近な自動車も化石燃料からの急速なシフトが起こりそうだし、省エネ家電が俄然関心を集めている。また、企業活動それ自体においても、社会的な責任を果たすという理由からだけでなく、コスト削減という財務的な期待から、無駄を省いたり、効率を高めることが強く求められている。

 IBMのSmarter Planetは、こうした背景から、企業運営やそれを支えるITには次の4つが求められているとする。「膨大な情報を活用した洞察力」「スマートな働き方」「柔軟かつ低コストなIT基盤」「地球環境に優しい効率性」だ。Lotus Notes/Dominoが新たに担うのは、特に2番目の「スマートな働き方」、つまり「Smart Work」をコラボレーションのさらなる高度化で支える役割だ。

 「意思決定、問題解決やカイゼン、意思伝達などからはじまって人材育成に至るまで、自動化できない領域はまだまだたくさんある。Lotus Notesはコラボレーションのためのコンソールとなり、ユニファイドコミュニケーションやソーシャルソフトウェア、あるいは基幹業務も統合する“デスクトップ”に進化している」と話すのは、「Working Smarter Forum 2009」を来週に控えた日本アイ・ビー・エムの三浦美穂 Lotus事業部長だ。

タイムトゥーマーケットを強く求められる日本企業

 Lotusといえば、Notesのイメージが依然として根強いが、インスタントメッセージングやWebカンファレンスのようなリアルタイムのコラボレーション機能であったり、ブログやWikiのようなソーシャルソフトウェアを組み合わせることで、コラボレーションはさらに効率化でき、スピードも上がる。

 環境の変化や厳しさが追い風となっているのだろうか。製品やサービスの迅速な市場投入が強く求められる中、新しい技術に保守的とされている日本企業の経営層にも変化が見える。

 ソフトウェア事業を統括する三浦浩専務執行役員は、「日本企業でも伝統的な階層構造の組織や働き方が変わろうとしている。多くの経営層がそれを認識し、さらに企業を変革したいと考えている。ソーシャルソフトウェアへの関心も高く、新しい技術によって、タテ割の組織を超えて力を合わせ、新しいものを生み出したり、問題解決に取り組もうとしている」と話す。

 かつてLotusのCEOを務めたジム・マンジ氏は、「ケイレツ」というキーワードでNotesを売り込んだが、日本企業には「カイゼン」という現場の強味もある。

 「規模の大小を問わず、日本の企業は中国をはじめとするグローバル市場との関わりを避けて通れなくなっている。日本の現場にはカイゼン活動が根付いているが、これをアジア地域にも展開しようとすれば、ツールが必要になる」と三浦氏。

 従来であれば、コマンド&コントロールで運営してきた企業も、「良いアイデアがあれば言ってほしい」と変わりつつあるのだ。

 「いま日本企業は、かつてないほど、製品投入のスピードを意識している」(三浦氏)

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