企業ITの複雑性に立ち向かう仮想化技術の神髄――CitrixのテンプルトンCEO“より簡単”な使い勝手をいかに実現するか(2/2 ページ)

» 2009年09月08日 13時08分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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シンプルな製品には力がある

 ITの簡素化がもたらすメリットについて、テンプルトン氏は次のように語る。

 「シンプルな製品とは機能が少なく能力に乏しいものだと思われがちだ。しかし、実際はシンプルな製品には可能性があり、とてもパワフルだ。シンプルさというのは偉大な力を備えているということにある」

 コンピューティングにおけるシンプルさとは「選択の自由」だと同氏は話す。「選択の自由は、個性を発揮できる点で大きな意味を持つ。例えば会社のものでも個人のものでも、あるいはPCやラップトップ、ネットブック、スマートブック、スマートフォンでも、自由に使えることだ。そして、どのようなロケーションでも仕事ができる自由でもある。組み合わせの自由でもある。アプリケーション、デバイス、ワークスタイルなど、個人にとってのベストな形をどのような形にも組み合わせられる。シンプルさというものはユーザーが自由にコントロールできることを意味し、コンピューティングの世界ではこれが重要だ。生産性を高め、ビジネスをより発展させることができる」(同氏)

 Citrixでは、こうしたシンプルさをエンタープライズ環境に提供する戦略を展開している。これを「Power of One」と呼んでいる。その意味は、一度構築をすればそれをあらゆる用途に対して永続的に使い続けられるITインフラ基盤にすることだという。

 「音声やビデオ、ドキュメントなど、どのようなアプリケーションでも、また、どのようなネットワーク接続や端末に対しても、そのインフラで対応する。どのようなユーザーシナリオに対しても、どのようなタイプのITサービスでも提供できるという考え方だ。われわれは、このアイデアを信じてシンプルさの価値を追求している。かつて、レオナルド・ダ・ヴィンチはこのように語っている。“Simplicity is the ultimate sophistication”(簡素であることは最大の洗練さである)。洗練されていることこそ、シンプルさということだ」(同氏)

ライバルは“現状”

 記者との質疑応答の中で、テンプルトン氏は仮想化分野におけるVMwareとの競合関係について次のように語った。「わたしとしては、主な競合はVMwareではなく現状のコンピューティング環境だと考えている。われわれだけでなく、仮想化にかかわっているすべてのベンダーがシステム現状に対して仮想化で競合しているのだ」

 複雑性を抱えた既存のITインフラは多数残されており、仮想化技術が普及する余地は大きいという。この「現状との競合」を有利に進めるには、同氏は仮想化市場に参入するプレイヤーが増え、ユーザーへより多彩な選択肢が提供されることを期待している。

 「われわれはクラウドやデータセンター、アプリケーション、デスクトップに仮想化技術を提供しており、近い将来はクライアントの仮想化にも進出する。エンドtoエンドの仮想化ではVMwareとは競合するが、テクノロジーやシンプルさ、価格、パッケージング、オープンアーキテクチャなどといった点で差別化できており、彼らとは明らかに違う選択肢がユーザーにある」(テンプルトン氏)

 同氏はまた、ユーザーの選択肢を増やすという意味では、米国で8月31日に発表された「Xen Cloud Project」にも大きな期待を寄せている。

 「わたしはこのプロジェクトにとてもエキサイティングな気持ちを抱いた。これは初めてオープンソースで、クラウドのインフラだ。Xen Serverが企業内クラウド(プライベートクラウド)のプラットフォームであるのに対し、Xen Cloud Projectはオープンクラウドに対応する。プライベートクラウドで使われる仮想マシンが、オープンクラウド上でも実行できる環境を実現することであり、企業の内外にあるクラウドコンピューティングの橋渡しとして大いに期待できるだろう。そしてユーザーの選択肢を増やすものであり、顧客の選択が市場をさらに拡大させ、さらなるイノベーションを促進してくれるはずだ」(同氏)

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