あなたの言葉はなぜ他人の心に響かないのか?オープンソースソフトウェアの育て方(2/7 ページ)

» 2009年09月29日 08時00分 公開
[Karl Fogel, ]

書いたことがすべて

 考えてもみてください。インターネット上では、あなたが何者であるかを判断する基準は、「あなたが何を書いたか」「他人があなたのことをどのように書いたか」しかありません。たとえあなたが頭脳明晰(めいせき)で洞察力に優れ、カリスマ性のある人物だったとしても、あなたの書いたメールが中身のない乱雑なものであれば、ほかの人たちはあなたを「中身のない乱雑な人」と見なすことでしょう。逆に、実際のあなたが中身のない乱雑な人だったとしても、あなたの投稿する内容が明快で有益なものなら、ほかの人たちは実際のあなたがどうであるかなんて気にしません。

 自分が何かを書くときには十分注意を払うようにしましょう。決して損はしません。フリーソフトウェアのハッカーとして長年の経験を持つジム・ブランディは、次のような話をしてくれました。

 あれは1993年のこと。当時わたしはFree Software Foundationで働いており、GNU Emacsのバージョン19のβテストをしていました。わたしたちはだいたい週に一度のペースでβ版をリリースし、それを試したユーザーからバグ報告をもらうようになっていました。直接会ったことはないのですが、いつも素晴らしい仕事をしてくれるユーザーが一人いたのです。彼のバグ報告は常に明快で分かりやすく、問題を解決する大きな助けになりました。時には彼自身がバグを修正してくれることもありましたが、それもまた的確なものがほとんどでした。まさに最高の奴だったんです。

 FSFでは、誰かが書いたコードを取り込む前には、そのコードの著作権をFSFに渡す法的手続きをしてもらうことになっています。見知らぬ誰かさんからもらったコードをそのまま取り込むことは、破滅への第一歩だからです。

 そこでわたしは、彼にメールで書類を送りました。「ちょっとした事務手続きが必要なんだ。内容はここに説明してあるので、まず君がここに署名してほしい。そしてもう1つの書類に君の雇用主の署名をもらってほしい。そうしたら君のバグフィックスを取り込めるだろう。いつもありがとう。感謝してるよ」。こんな内容でした。

 彼から返ってきた返事は「わたしには雇用主はいません」というものでした。

 で、わたしは言いました。「ああ、そうかい。それなら、代わりに君の通う大学に署名をもらって送り返してくれないかな?」

 しばらくして、彼から再び返事が返ってきました。「あ、あの……。僕、実はまだ13才で、親と同居しているんですけど……」

 彼の文面がとても13才のガキが書いたのようなものには見えなかったので、誰もそんなことは想像していなかったのです。皆に気に入られるようなものの書き方について、これからみていきましょう。

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