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メディアに火を付けるコツ【前編】WebPRの仕掛け方(2/3 ページ)

» 2009年10月02日 08時00分 公開
[太田滋(ビルコム),ITmedia]

メディアを巻き込む企画の作り方

 消費者の“自分ごと化”を促進するもう1つの手法は、「メディア向け企画提案」を行うことである。これは企業がプレスリリースとして出すニュースを、メディアに取り上げてもらうために、専用の提案書を作ることだ。

 なぜわざわざ提案書を作らなければいけないのか。それは、あるテーマについて消費者の問題意識を芽生えさせるためには、「商品が出た」というニュース記事だけでは訴求力が弱いからだ。

 例えば「朝専用のカレーが発売」という記事がYahoo!ニュースに掲載されていた場合、朝にカレーを食べるという生活習慣がない人にとって、このニュースは特に見向きもされないだろう。

 では「朝カレーはを活性、ビジネスマンの朝食に最適」という見出しの記事ではどうか。この場合、見出しを見た人は「毎朝目覚めが悪く、午前中は仕事がはかどらない」と共感するかもしれないし、「試しに朝カレーを作ってみよう」と考えてくれるかもしれない。つまり、「朝カレー」というテーマに問題意識を持ってくれるのだ。

 消費者にあるテーマについての問題意識を自覚させるには、単体商品に関するニュース記事だけでは事足りない。新しい生活スタイルや流行を伝えるような特集記事をメディアが掲載してこそ、消費者がテーマに関心を持つようになるのだ。それを見据えた上で、企業は訴求したいサービスや商品について、どう情報を発信すればいいかを考える必要がある。

ニュースの7要素

 こうした特集記事を通じて商品やサービスを訴求したい場合、アンケートリリースにはメディアが思わずニュースとして取り上げたくなるような要素が含まれていることが重要だ。その要素は大きく分けると7つある。企業はこれらのいずれかを、アンケートリリースおよびメディア向け提案企画に落とし込む必要がある。以下が、ニュースに盛り込むべき7つの要素だ。

(1)新規要素:新しいサービス、製品、ビジネスモデルや新発売、新会社設立、新キャンペーン開始などの要素。また「国内初」など、これまでに無い取り組みもニュースの価値を高くする。

(2)季節要素:夏休み、運動会など季節性がある情報。単なる商品の発売だけではニュース性は薄いが、例えば9、10月などの運動会シーズンに、運動会をテーマとした商品(お弁当箱など)に関する情報はニュース性が高くなる

(3)時流要素:世界不況や天災など時事性が強い要素を含んだ情報。大きな政治問題や国際情勢だけでなく、消費者の話題に挙がりやすい「お弁当ブーム」なども含む

(4)実利要素:情報の受け手にとって実利性が高い情報。価格の値下げやキャンペーン情報が該当する

(5)技術要素:これまで不可能だったことが可能になる技術はニュース性が高い。新型エネルギーや新型ディスプレイなどが一例である。

(6)大成要素:現時点では小規模だが、将来大成するようなサービスや商品の情報。モバイル市場や環境関連ビジネスなどは報道される機会が多い。

(7)実績要素:すでに始まっているサービスや製品でも会員数、売上などの成功実績を入れるとニュース価値が高くなる。映画の興行成績や企業の決算情報が該当する。


 上述した「朝カレーは脳を活性、ビジネスマンの朝食に最適」の記事の場合、「午前中は仕事がはかどらない」というビジネスパーソンにとって利益になる情報が提示されており、ここには「実利要素」が含まれている。

ニュース7つの要素 ニュース7つの要素(出典:ビルコム)

メディアが思わず取り上げる企画書の作り方

 メディア向け提案企画を作るポイントは以下の5点だ。これに気を配りながら、企画書を作ってみよう。

(1)タイトル新聞やWebの見出しに使えるようなインパクトがあり、記事内容のイメージがわくタイトルを付ける

(2)概要:ニュース7つの要素を含んだ内容で企画を説明する。背景となるデータを部分的に挿入しながらまとめると、より説得力が高まる

(3)背景:時事性のあるニュースや調査データを記載する。データや資料は企画内容の裏付けとなるため多く盛り込む方がいいが、行政やシンクタンクなどの調査機関が発表している情報提供元を使用すると、信頼度が増す

(4)構成案:一企業の情報だけではなく、競合企業や第三者機関の情報も公平に取り扱う。例えばレトルト食品の企画書を作る場合、自社だけでなく他社のレトルト食品や、「簡易さ」という点で同じカテゴリーに属するカップ麺などの商品も同様に紹介するといい

(5)提供素材:製品やサービス、人物などの画像素材を盛り込む。企業側の情報だけでなく、競合企業も含めた市場データや、専門家やサービス利用者の意見などを提示するのが望ましい


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