クラウドに関する「モヤモヤ」を解消する〜後編栗原潔の考察(3/4 ページ)

» 2009年10月06日 08時49分 公開
[栗原潔,ITmedia]

モヤモヤ7 システムインテグレーターは不要になるのか

 クラウドが普及することで、利用者は自由にクラウドサービスを選び、マッシュアップなどの手法で組み合わせて使うことができるようになるため、従来型のシステムインテグレーションの需要がなくなるという議論が聞かれることがある。しかし、このような状況が訪れるのは(仮に訪れるとしても)はるか将来のことになるだろう。

 企業コンピューティングの世界は、単に幾つかのクラウドサービスを組み合わせれば完結するほど単純なものではない。さまざまな例外ルールの存在、障害発生時の対応、多様なレガシーへの対応など、クラウド側だけで解決できない課題が多数存在する。また、複数のクラウドサービスの連携やクラウドサービスと企業内(オンプレミス)システムとの連携も複雑な課題だ。これらの課題対応において、システムインテグレーターが果たすべき役割は数多いと思われる。

 例えば、過去にERPが普及し始めた時のことを思い出してほしい。「統合パッケージを導入し、ビジネス・プロセスをパッケージの仕様に合わせて変革すれば、従来型の開発やインテグレーション作業は不要になる」との主張が聞かれたことがあった。しかし、現実にはこのような状況はほとんど発生していない。ERPの登場はシステムインテグレーターの仕事を奪ったというよりも、システムインテグレーターに新たな需要をもたらしたといった方が適切ではないだろうか。クラウドがシステムインテグレーターのビジネスに与える影響も同様であると考えられる。

 もちろん、システムインテグレーターに求められる仕事の質が変わることは充分に予測される。アプリケーションパッケージの普及により、業務ロジックを一からコーディングするような仕事は減り、全社的なアプリケーション統合などのより上位レベルの仕事の需要が増した。同様にクラウドの登場により、インフラの設置・導入のような実質的な箱売りビジネスの需要は減る一方で、本来の意味でのシステムインテグレーションの需要が増すことになるだろう。システムインテグレーターにとっては決して悪い変化ではないが、この変化に乗り切れないシステムインテグレーターにとっては厳しい状況が訪れるかもしれない。

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