クラウド時代のデータベース新潮流

仮想化、クラウド時代におけるミドルウェアの新たな役割クラウド時代のデータベース新潮流(3/3 ページ)

» 2009年11月04日 09時38分 公開
[岩上由高(ノークリサーチ),ITmedia]
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システム階層の単純化に向けた動き

 こうしたミドルウェアの進化はシステムの階層を単純化する動きととらえることもできる。仮想化技術を活用するということは仮想化のためのハイパーバイザーがハードウェアとOSの間に挟まることを意味する。システム階層はその分だけ複雑化し、運用管理やトラブル対応において意識すべき対象も増える。ミドルウェア自身の役割を増やすことはそうした負担を軽減する手段の1つでもあるわけだ。

 ただし、ミドルウェアの役割を増やすことは仮想化ハイパーバイザーが不要になることを意味するわけではない。実際、Oracleも「RAC(Real Application Clusters)」と「Oracle VM」の併用によるメリットを訴求している。あくまで数多くある選択肢の1つとして、ミドルウェアの役割拡大の効果をとらえることが大切だ。

 システム階層を単純化する動きはミドルウェア以外のシステム階層においても見られる。VMwareのSpring Source買収などはその一例だ。「vSphere」という仮想化ハイパーバイザーと「Spring Framework」というフレームワークの両方をVMwareがまとめて面倒をみることで、「Spring Framework」上で開発したアプリケーションを擁するシステムインテグレーターが仮想化やクラウドへ取り組む際の敷居が下がることになる。

 あるいは、「Windows Server 2008」における「Hyper-V」搭載もOSの役割拡大によるシステム階層の単純化例ととらえることができるだろう。このようにシステム階層の単純化への取り組みはシステム階層のさまざまな個所で発生してきており、今後も新たな取り組みが登場してくると予想される。

ベンダーロックインを避けながら、役割拡大のメリットを享受する

 ただし、こうした「システム階層の単純化」も場合によっては新たなベンダーロックイン要因となることに注意を払う必要がある。ミドルウェアがハードウェアやOSが担っていた役割をカバーすることは運用管理面で大きなメリットをもたらすが、そうした機能の活用は特定ミドルウェアへの依存度を高めることにもつながる。自社が活用しようとしている機能はベンダー固有のものなのか、他社製品でも実現可能な標準的なものなのかを常に意識し、「ベンダー非依存」と「システム階層の単純化」を両立させながら、情報処理システムのポータビリティを確保していくことが肝要である。

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