世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

海外で成功をつかむキーワードは「標準化」――早稲田大学・岩崎氏世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/2 ページ)

» 2009年11月12日 08時15分 公開
[伏見学,ITmedia]
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年間1500人の高度デジタル人財を育てる

ITmedia 早稲田大学では毎年、主要国の電子政府におけるICTの進ちょく度などを評価した「電子政府世界ランキング」を発表しています。最新のランキングではシンガポールが1位、日本は5位でした。この違いは何でしょうか。

岩崎 アジアの中で日本はシンガポールに続き2位で、韓国と同位でした。国の規模や人口密度を考慮するとシンガポールは電子政府を推し進めやすい環境にあるため、必然的に順位が高くなると考えています。ですから単純比較はできません。

 一方、日本が34カ国中5位というのは評価すべきだと思います。順位押し上げ要因の1つはITインフラで、日本はオンラインサービスが拡充しています。ガバナンスの意識の高さも評価されています。CIO(最高情報責任者)の人材については、まだまだ不足していると言われつつも、徐々に企業・行政で育成強化の動きが見られます。政府も「i-Japan戦略2015」の中で高度デジタル人財に関する新しい施策を打ち出しました。各省庁や地方自治体において年間1500人の高度人財の育成を目指しています。

 米国でもオバマ新政権に代わってから、CIOとCTO(最高技術責任者)をホワイトハウスに設置することになりましたし、イギリスやフランスなど先進国の国家情報通信戦略を見ても高度IT人材の育成に力点を置いています。

国際競争力の強化に向けて

ITmedia 同じアジア諸国である韓国や中国の現状はいかがでしょうか。

岩崎 中国政府は各省を統括するCIOの設置などが必要だと感じています。しかし地理的な問題もあり、電子政府の構築を進めていますが省や地域によってはデジタルデバイド(情報格差)があります。韓国では、テレビで行政の最新情報の検索や意見交換などができるテレビ政府(T-government)や、政府職員と市民がモバイルネットワーク経由で行政サービスに関するやり取りを行うモバイル政府(M-government)などが登場しています。電子政府と比べるとまだ活用度は低いですが、特にモバイルは新興国での普及率が高いため、他国への浸透も期待できます。

 日本における今後の課題は官民の連携です。電子政府の推進、利活用率の向上を実現するには民間の力を活用しない手はありません。米国を事例とする積極的な人事交流や知見の共有が求められるでしょう。

 さらに、国際競争力を強化するには国際社会に通用する人材育成、特に標準化に強い専門家の育成が必要になるでしょう。またCIO自身もグローバルな展開ができる素養を身に付けなければなりません。国内の過当競争を国際マーケットに延長している現状は決して好ましくなく、国際企業の企業同士の連携や協調も国際マーケットには必要になります。



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