現場で効くデータ活用と業務カイゼン

基幹システムを自作してみる――中堅メーカー、東新油脂の場合導入事例(2/2 ページ)

» 2009年11月18日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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まとまった時間を作るため残業するメンバー、それを認める社長

東新油脂 営業部 販売管理課 若月忍氏

 開発プロジェクトは、それぞれのメンバーが業務の合間の時間を使って進めていった。通常業務と開発プロジェクトの掛け持ちは、どうしても苦労が伴うもの。川村氏とともにプロジェクトの中心となった、営業部 販売管理課の若月忍氏はこう話す。

 「普段は工場を行き来しているため、オフィスで落ち着いて作業をする時間があまりありません。まとまった時間が必要なときは残業をするなどして作りましたね」(若月氏)

 社長は、このような残業も、業務の一環として認めているという。

 「サーバに上げてしまったDBに手を入れるときなども、ほかの社員が使わない時間に行うため、やはり残業が必要になります。社長も、システムに手を入れるためには、ある程度の時間が必要だと知っているのでしょう」(川村氏)

 社長の理解と、開発メンバーとなった社員たちの努力によって作られた基幹系システムは、ほぼ完成を迎えている。

 「先に販売側システムを構築し、一昨年には受注から売掛、請求まで一連の流れを完成させました」(若月氏)


キャプチャ FileMakerで業務を電算化した結果、ペーパーレス化だけでなく“重複していた業務の見直し”といった効果も生まれたという。画像は共有ファイルと呼び出しパレット(クリックで拡大)

 続いて、調達や製造にかかわる部分の開発が進められ、それが今年から稼働を開始している。2010年4月からの本番稼働を目指し、今は既存システムと並行運用中だ。

 「金額の整合性を確認するのはもちろん、新システムでは一部の業務の流れを変えたので、その新しいフローに慣れる必要もあるのです。業務は、けっこう変わりますよ。例えば工場に入ってくる予定の原料リストを入力すると、その買掛金額がデイリーで確認できるようになっていたりします」(川村氏)

 これまで紙ベースで作業していた部分も、多くがシステム化されたという。現場からも、おおむね好評のようだ。

「FileMakerカンファレンス」での体験を糧に

リレーション図 東新油脂の“自作された基幹システム”は、もはや業務に不可欠なもの。それだけにバージョンアップは慎重に検討したいという。画像は実際の販売管理リレーション(クリックで拡大)

 現在、東新油脂では50ライセンスのFileMakerを利用している。主にバージョン9、一部で最新の10が使われているという。

 「サーバはFileMaker 9としているため、ほとんどのクライアントもバージョン9でそろえています。しかし一部では古いOSの端末もあり、対応OSの都合からバージョン7を使うなどしているので、個人的には特定のバージョンにそろえたいし、そうするとOSのバージョンもそろえたいところではありますね。一方、FileMaker 10ではツールバーの仕様が変更され、使い勝手が変わったこともさることながら、画面上の占有面積が大きくなったため今まで作ってきたレイアウトが崩れるなどの問題も出ています」と川村氏は話す。

 一方で、今後のバージョンアップの検討については、慎重な姿勢を見せる。全社規模の基幹系システムを構築した結果、システム全体としての整合性を重視しなければならないからだ。

 「サーバも含めてFileMaker 10に移行するのか、あるいは10の次のバージョンを待つのかについて、Windows 7の登場も踏まえつつ、検討する必要がありそうです。先日のFileMakerカンファレンスに参加して、講師の方にも相談してみましたが、『安定して動いているものに手を入れたくない』という見解も聞かれました。今後は、ユーザーが移行したくなるような機能や、移行を支援するための機能を充実させてくれればいいな、と思っています」(川村氏)

 川村氏らが強く求めているのは「グラフ機能」だ。現状では、データをExcelに出力してグラフを作成しており、不便に感じているとのこと。サードパーティー製プラグインなどの利用も考えたが、コストや手間などの点から採用には至らなかったという。

 「仕事の上で集計をする作業が多いので、FileMakerの標準機能として、グラフが使えると助かります。インタフェースもユーザーフレンドリーであることを望みます」(若月氏)

 なお、FileMakerカンファレンスに参加した川村氏は、貴重な体験が得られたと高く評価している。「カンファレンスは初めて参加したのですが、講師やほかの参加者、FileMakerの技術者などと話をすることができ、いろいろ勉強になりました。今後も、こういう場を大切にして欲しいです」(川村氏)

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