位置・地図連動型広告の潜在能力アナリストの視点(2/2 ページ)

» 2009年11月27日 08時00分 公開
[中川太郎(矢野経済研究所),ITmedia]
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 位置/地図連動型広告を出稿する企業の業種をまとめたのが以下だ。参入している企業や提供するサービスによって差がみられるものの、出稿が特に多い業種は飲食店、不動産、美容院、宿泊、病院などである。フランチャイズチェーンの店舗を構える企業など、一定規模以上からの広告出稿が中心となっている。

位置/地図連動型広告への主な広告出稿業種

飲食店、宿泊施設、美容院、病院、小売店、不動産業、旅行/観光レジャー、特産物、求人・人材、イベント、英会話、エステ、金融機関、法律事務所、大学・専門学校、博物館、カギ修理、家庭教師、キャンペーンによる映画告知、飲料メーカー


 複数の地域関連媒体をネットワーク化し、広告を配信する位置/地図連動型広告の市場規模は、2008年度時点ではまだ数十億円程度にとどまっている。広告主数は着実に増えているが、同市場の爆発的な拡大にまでは至っていない。

 市場が拡大しない理由の1つは、位置/地図連動型広告のサービス形態はクリック課金が中心であり、クライアント1社当たりのグロスの広告費が少ないことだ。事業自体の規模も相対的に小さくなってしまう。

 もう1つは広告主の幅が限定されている点だ。CPC(Cost Per Click:クリック単価)やCPA(Cost Per Acquisition:成果・獲得当たりの単価)を重視する企業からの出稿が中心となり、国内の大手企業からは出稿が望みにくい。また個人店舗などの小規模の事業主による出稿も大きく進んでいない。顧客獲得単価が高く、マンパワーによる営業活動も必要とするため、現状では企業が積極的な営業を展開できていないことも市場の拡大を阻む要因だ。

 同広告をインターネット中心の展開だけに頼ると、地方企業の出稿を得るのが難しくなる。広告主を増やすには、地方企業の担当者や個人店舗の代表と顔を合わせて出稿を依頼するといった地道な業務が欠かせない。地方企業の出稿増には、まだ時間が必要だ。

今後の市場展望

 位置/地図連動型広告市場の拡大には時間がかかるが、現在の不況下においても同市場が成長していることは確かだ。インターネット広告全体においても、単に広告を表示するだけでなく、行動ターゲティングなど何らかのターゲティングを取り入れる傾向が強まっている。この潮流はターゲティング要素の強い位置/地図連動型広告のニーズを一層押し上げていくだろう。

 同市場の拡大には、PCや携帯電話への広告配信に加え、ほかのデバイスへの広告配信(多デバイス化)やこれらの複数デバイスの連携によるクロスメディア案件の増加に期待がかかる。

 多デバイス化の動きではデジタルサイネージ(電子看板)および通信カーナビゲーションが注目されている。

デジタルサイネージ

 Web/モバイルサイト向けに配信する地域広告をデジタルサイネージにも配信する方法は、今後引き合いが増えていくとみられる。画面に広告を表示するだけでなく、デジタルサイネージから携帯電話に広告を配信する手法も出てくる。またかざした携帯電話に利用者の関心に合った地域情報を配信するだけでなく、携帯電話上の地域情報をデジタルサイネージで閲覧するといった方法も広がっていく。

通信カーナビゲーション

 通信カーナビゲーションについては、既にオプトやインクリメントPがパイオニアの通信PND「エアーナビ」への広告配信を実現している。通信ナビ向けの広告は現状「プル型」の配信である。これは「プッシュ型」の広告配信に比べて広告のインプレッション(表示)数が少なくなるため、広告主が出稿による成果を得にくいという問題がある。問題解決に向けて、プッシュ型の広告配信サービスを検討する動きもある。

 広告のカーナビゲーションへのプッシュ配信は、利用者にとってはメリットがないという見方が一般的だ。だが通信カーナビの通信費用を広告収入でまかなうことができれば、利用者は無償で利用できるようになる。通信費用の負担の代わりにプッシュ型の広告配信が了承されるようになれば、利用者に受け入れられる可能性も高まりそうだ。

 プッシュ型の広告配信が実現すれば、広告のインプレッション数を増やし、広告効果も向上する。そうすれば、広告主数の増加も期待できる。そして広告メディアが複数のデバイスに対応すれば、クロスメディアによる企業のキャンペーンが増え、市場規模の拡大に貢献していくだろう。

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