ネットワークセキュリティ市場の現状と展望アナリストの視点(2/2 ページ)

» 2009年12月02日 08時00分 公開
[山本貴史(富士キメラ総研),ITmedia]
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現在のトレンドと市場動向

 情報システムの保護やコンプライアンスの証明においては、内外の脅威に加え企業全体のリスク管理も求められる。セキュリティ対策として考える項目は多様化し、ツールの運用も多岐にわたってくる。ここでセキュリティ対策が重荷になる企業が出始めている。具体的には、セキュリティの専門家を確保できなかったり、人的リソースを充てることができなかったりといった具合だ。

 こうした中需要が高まっているのが、不正アクセスやウイルスなどの脅威を監視するセキュリティ監視サービスだ。あらゆる脅威を防除できる統合型セキュリティ監視サービスやログの統合管理サービスに加え、セキュリティ対策を専門の業者に委託するサービスの導入も進んでいる。こうしたセキュリティサービスの台頭は、同市場の拡大をもたらす要因の1つになっている(図3)。

ネットワークセキュリティ市場におけるセキュリティ機器/ツール市場とセキュリティサービス市場の比率 (図3)ネットワークセキュリティ市場におけるセキュリティ機器/ツール市場とセキュリティサービス市場の比率(出典:富士キメラ総研2009 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 <上巻:市場編>』」)

サービス分野別の市場動向

 セキュリティをサービスの種類ごとに分類し、2008〜2013年度までの平均成長率を割り出したのが(表1)だ。トップ5は以下の分野になった。

ランキング サービス名 2008年度 2013年度 平均成長率
1 ログ統合管理サービス 325 1500 35.8%
2 オンラインバックアップサービス 6500 2万8500 34.4%
3 タイムスタンプサービス 950 2300 19.3%
4 不正アクセス監視サービス 1万4000 3万2000 18.0%
5 統合セキュリティ監視サービス 1万500 2万3200 17.2%
(表1)セキュリティサービス市場別平均成長率ランキングTop5(単位:百万円)出典:富士キメラ総研2009 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 <上巻:市場編>

 表1には出ていないが、今後高い市場成長率となるのが、内部統制におけるIT全般の統制を支援するサービス、コンプライアンスを証明するサービス、事業継続やデータの真正性を確保するサービスだ。日本版SOX法及びIT統制対応への需要は尽きず、市場は拡大する。逆に導入が一巡したウイルス/ファイアウォール監視関連のサービスは、コモディティ(日用品)化で価格が低下している。関連する市場も縮小傾向となる。

 (表2)はセキュリティ関連の機器やツールの平均成長率を並べたものだ。上位を占めたのは情報漏えい対策や内部統制、コンプライアンス関連の製品だ。内部の脅威に対するツールの伸長も見られる。脅威はネットワーク層からアプリケーション層にも及んでいるのが現状である。今後はアプリケーションに対するセキュリティ対策が強化されていく。

ランキング 製品名 2008年度 2013年度 平均成長率
1 電子透かし 90 750 52.8%
2 DLP 480 3220 46.3%
3 変更管理ツール 1000 4000 32.0%
4 統合ログ管理ツール 3600 1万2200 27.6%
5 Webアプリケーションファイアウォール 1270 4040 26.0%
(表2)セキュリティ機器/ツール平均成長率ランキングTop5(単位:百万円)出典:富士キメラ総研2009 ネットワークセキュリティビジネス調査総覧 <上巻:市場編>

クラウド型サービスという潮流

 猛威を振るう脅威に対するセキュリティ対策のツールは日々増えている。だがツールの運用には手間が掛かる。ベンダーからの情報やアップデートファイルを入手し、その都度適用させなければならない。脅威の拡大に伴い、更新データは肥大化する。あらゆる対策を忠実にしようとすれば、その分だけ時間を投下しないといけない。ここで生じるタイムロスも、企業のセキュリティ対策における大きな足かせとなる。

 この負担を軽くするのが、セキュリティ対策のサービスをネットワーク経由で提供する「クラウドコンピューティング型」のサービスだ。有効に使えば、企業がセキュリティ対策における技術の習得や運用管理に掛かる手間を削減できる。これまでセキュリティ対策に費やしていた時間を、より専門的な対策を講じる時間に充てられるようになる。

 脅威は大量化、巧妙化する一方だ。クライアント/サーバ型を中心とした従来型のセキュリティ対策では、絶対的な効果が得られなくなっている。クラウドコンピューティングの仕組みを取り入れた対策は、セキュリティレベルの向上、運用管理の負担軽減、対応時間の低減などの大きなインパクトをもたらすはずだ。

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