オープンモデルがもたらす家電の脅威情報家電のセキュリティリスクと対策(2/3 ページ)

» 2009年12月18日 07時05分 公開
[斧江章一(トレンドマイクロ),ITmedia]

3つの視点で考える変化とは

 それでは情報家電の取り巻く環境がどのように変化したのか、「ネットワーク(通信規格を含む)」「端末プラットフォーム」「コンテンツ」の3つの視点で考察してみたい。

ネットワーク

 情報家電をつなぐ通信インフラは、外部ネットワークと内部ネットワークに大別される。外部ネットワークは、家庭と外部を接続するもので光ファイバ、ADSL、ケーブルテレビなどがあり、デジタル放送番組の送信やインターネット、データ通信サービス、IP電話などに利用されている。2000年以降はインターネットが家庭へ急速に普及し、当初のPCを対象としたサービスから、最近ではNTTグループの「フレッツ・テレビ」に代表されるテレビサービスにも広がった。

 一方、家庭内で利用される内部ネットワークも充実しつつあり、無線LANやBluetoothなどを導入して、ゲーム機器でオンラインゲームを楽しんでいる家庭も多い。無線LANは、これまでPC接続が主な用途だったが、最近はゲーム機器に加えてデジタルカメラやプリンタなどの周辺機器にも無線LAN機能が搭載されている。これらの機器を直接無線LANへ接続して利用するケースも多い。

 簡単に家庭内をネットワーク化する機能として「DLNA(Digital Living Network Alliance)」や「エコーネット」も出現した。DLNAでは、サーバに保存した写真や動画などのコンテンツをネットワーク上にあるプレーヤーで再生できる。DLNA対応機器はUPnP(ユニバーサル・プラグ&プレイ)に対応して、複雑な設定をせずに接続してすぐに使えるのが特徴だ。エコーネットは環境家電の制御などを目的にした設備系ネットワークの規格であるが、AV機器ともゲートウェイを介して接続できる。

 また、既存電力線を活用して電源コンセントにつなげば高速通信ができる「PLC(Power Line Communications)」なども実用化された。このように家庭と外部、家庭内での接続の両面でネットワークインフラが整備され、オープンなネットワーク環境へ移行しつつある。

端末プラットフォーム

 かつての家電はメーカー各社がOSやマイクロプロセッサを独自に開発し、極めてクローズドな環境で展開していた。しかし、最近では汎用のOS(Linux、Windows、Symbianなど)やプロセッサ(ARM、MIPSなど)を採用するケースが増えている。製品が多機能化、高機能化してリッチコンテンツを扱うようになり、汎用製品を利用せざるを得ない。

 例えば、現在の携帯電話端末のコード数(プログラムの行数)は数百万行とも言われる。これだけの開発を実現するには、いかに規模の大きいメーカーでも開発リソースが不足してしまう。企業は製品を差別化するために、差別化の出しにくい基本機能の部分で汎用製品を採用し、開発リソースやコストを抑えて、差別化できる機能の開発に集中する。

 汎用製品の利用は経営的には正しい判断といえるものの、開発環境などのオープン性が高く、セキュリティリスクもそれだけ高まる。不正コードを作成したり、脆弱性の情報が漏えいしたりする可能性が高まり、汎用製品を採用することはセキュリティリスクを負うことと同意義と言えよう。

コンテンツ

 コンテンツ面ではどうだろうか。例えばパナソニックのデジタルテレビ「VIERA」の一部機種には、動画共有サービス「YouTube」の閲覧機能を搭載する。シャープの「AQUOS」、東芝の「REGZA」はIPTVに対応するものがあり、デジタルテレビ向けの情報配信の代表的なサービスである「アクトビラ」や、テレビメーカーによる独自コンテンツを視聴できる。

 また、フルブラウザを搭載したテレビも増加し、2009年4月にはテレビでインターネットを楽しめる「テレビ版Yahoo! JAPAN」サービスが開始された。同サービスは、特定のメーカーに限定されずにフルブラウザで閲覧でき、画面デザインや操作性などをテレビで利用するのに適した形にカスタマイズされている。このようにテレビで楽しめるリッチコンテンツが増えたが、これらのコンテンツはPCで利用するのと同様のオープンコンテンツであり、セキュリティの脅威も想定される。

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