セールスフォース「Force.com」OEM展開のインパクトWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2009年12月21日 09時20分 公開
[松岡功ITmedia]
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2010年はシステムインテグレーターにとって正念場を迎える時に

 OEMパートナーがこのプログラムを利用して開発・提供を予定しているアプリケーションなどについては関連記事を参照いただくとして、今回の発表で注目されるのは、プログラム開始当初からNEC、富士通、日立グループといった国産システムベンダー“御三家”がOEMパートナーに名を連ねたことだ。

 もっとも、NEC、富士通、日立ソフトは、かねてセールスフォースとSaaS型CRMアプリケーション「Salesforce CRM」およびForce.comについて販売パートナー契約を結んでおり、今回のOEM契約はその発展形といえる。

 ちなみに販売パートナーには、NTTコミュニケーションズ、キヤノンITソリューションズ、新日鉄ソリューションズ、CSKシステムズといった有力システムインテグレーターも名を連ねており、これらがシフトすればOEMパートナーの層はますます厚くなりそうだ。

 NEC、富士通、日立ソフトがこぞって今回のプログラムに名を連ねたのは、Force.comの実績を高く評価しているからだ。Force.comは現在、世界で6万7900社に利用されているSalesforce CRMのプラットフォームとして、10年以上にわたる運用実績がある。Force.com上で開発されたアプリケーションは、世界で13万5000を超えているという。

 さらにOEMパートナーにとっては、アプリケーションを自社の販売チャネルに加えて、セールスフォースのAppExchangeを通じて世界中のセールスフォースのユーザーに販売展開できるのも魅力となっている。

 会見では、NECのITプラットフォームビジネスユニット システムソフトウェア事業本部、池田治巳事業本部長が、今回のプログラムに対する取り組み姿勢についてこう語った。

 「NECでもさまざまなクラウドサービスへの取り組みを行っているが、今後重要になってくるのは、多様なサービスをうまく連携させながら、サービス全体として顧客の利便性をいかに高めていくか、だ。そのためにも、実績のあるセールスフォースのサービスとの連携を一層強化しながら、これからのサービス化の時代に臨んでいきたい」

 このスタンスは、富士通も日立ソフトも同じだろう。

 ただし、特に“御三家”のようなコンピュータメーカー系システムインテグレーターにとって今回のようなプログラムは、ハードウェアが売れなくなるという悩みが一層深くなる。SaaS、PaaSのようなパブリッククラウドサービスでは、ハードを装備するデータセンターの運営はすべてSaaS・PaaSベンダーが担うからだ。

 とはいえ、大手システムインテグレーターがこれから狙う本命は、パブリッククラウド・サービスを取り込みながら、ハードも売り込めるプライベートクラウド・サービスの展開だろう。そこに本業のシステムインテグレーションも発生する。だが、そうしたハイブリッドクラウド・サービスの明確なビジネスモデルは、まだどこも描けていない状況だといえる。

 セールスフォースが打ち出した今回のプログラムは、ビジネス分野でのパブリッククラウド・サービスの急拡大を予感させる。それに対し、システムインテグレーターはどう事業転換を図って新たなビジネスモデルを確立させていくか。

 2010年1月には、Force.comに続いてマイクロソフトのPaaS「Windows Azure」も本格始動する。2010年はシステムインテグレーターにとって正念場を迎える時になりそうだ。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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