ネットいじめに負けない親子交流法ネットファーザーの金言(2/3 ページ)

» 2009年12月28日 11時30分 公開
[吉田賢治郎,ITmedia]

親子のきずなを強くする

 まず、サトルくんと円滑なコミュニケーションを行い、信頼関係を築くためのインターネット(ネット)の使い方をお父さんに紹介した。お父さんがネットでのコミュニケーション力を身に付ければ、ネット上でのさまざまなトラブルを解決できるだけでなく、親子の信頼関係も深まると考えたからだ。

 わたしは、お父さんに基本的なコミュニケーションスタイルとネットを組み合わせたコミュニケーション方法を伝えた。それは、以下の3つだ。

  1. ストレートトークの“お父さんの独り言ブログ”
  2. ストレートトークを利用した“会社帰りの1行メール”
  3. コーチングスタイルでの“メールのやりとり”

お父さんの独り言ブログ(書籍より抜粋)

 あるお父さんが、怒らない子育てと家族とのコミュニケーション向上を目的に、“独り言ブログ”を書いている。身のまわりで起きた出来事や気付いたこと、気になったことなどを短い文章で書くもので、内容は次のようなものだ。

 子どもとの楽しかった出来事、会社で大変だった出来事、子どもの行動で心配だからやめてほしいことや変えてほしいこと、週末にしたいと思っていること……。

 このお父さんは、“独り言ブログ”を利用することによって、お父さんが感じているさまざまなことを、子どもに察してもらえるようになった。そして子どもは、お父さんを身近に感じられるようになったそうだ。

 『子どもをネットから守り、ネットで育てる』より抜粋

『子どもをネットから守り、ネットで育てる』(翔泳社、吉田賢治郎著) 『子どもをネットから守り、ネットで育てる』(翔泳社、吉田賢治郎著)

 サトルくんにお父さんの素直な気持ちを伝えるために始めた“独り言ブログ”だが、いまでは昔からの家族写真も見られるようになり、サトルくんはそれも楽しみにしている。

 お父さんも自分の悩みや気持ちをブログに書くことは、気持ちを整理することに役立っているそうだ。

会社帰りの1行メール(書籍より抜粋)

 お父さんが会社から帰宅する前に、帰ってから何ができるかを奥さんや子どもたちに短いメールで送るものである。例えば小学生の子どもあてなら、

「早く帰るから風呂に一緒に入ろう」

「仕事が残っているから一緒に本を読めない。休みに新しい本を借りに行こう」

「今日は疲れているから早く寝る」

といった短いメールを送るのだ。

 『子どもをネットから守り、ネットで育てる』より抜粋

 事件の後、サトルくんのお父さんは「今日はお父さんが洗濯できるからやろうと思う」「保護者面談は土曜日しか無理なのだが、どうしたらいいだろう」「まだご飯を食べていないのなら、いつものラーメン屋で食べようよ」などのメールを会社帰りに送るようになった。お父さんはサトルくんとのコミュニケーションが十分でなかったと反省したからだ。

メールでコーチング

 お父さんがコーチングを子どもとの会話に生かせば、子どもは自分の悩みや気持ち、意見を話しやすくなり、最終的には子ども自身が解決策を導き出せるようになる。コーチングにはさまざまなテクニックがあるが、子どもに使用する場合の基本は、指摘や意見やアドバイスをせずに、子どもの話を上手に聞くことだ。まずは子どもの話を共感して聴いて、自分で考えさせ、行動を決断させ、応援するところからはじめてみよう。具体的には次のようなスタイルで子どもとの会話を進める。

  • 子どもの行動が間違っていても、直接、その行動には触れない
  • 子どもの感情、行動の理由を理解し、心から共感し、それを言葉にして返す
  • 子どもが自分で自分の気持ちを整理できるように話させる
  • 本当の問題点を整理させ、解決策を子ども自身に考えさせる
  • 子どもが自分で考えた解決策の中から、自分がとるべき行動を選ばせる
  • 子どもが第一歩を踏み出せるように、親は応援することを伝える

 これは子どもに対する、お父さんの日々の基本スタイルと言っても良いだろう。

 『子どもをネットから守り、ネットで育てる』より抜粋

 サトルくんは学校や友達の話をするようになり、「サッカーの強い私立を目指すか、進学率の高い公立にいくか」といった相談ごともメールしてくるようになったそうだ。

 家庭におけるお父さんの重要な役割は、子どもが自分で考え、行動する自由を極力与え、悩んだり迷ったりしたときには相談できる関係を作ることである。いまの子どもは携帯電話のメールを最も利用しているので、それを利用したコミュニケーションが有効だろう。

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