クラウド時代のSIに求められるものとは何か。このテーマを中心に先週行われた富士通の説明会から、ポイントをピックアップし考察してみたい。
富士通が先週21日、クラウドコンピューティング時代に対応したソフトウェア・サービス事業について説明会を行った。この事業に対する具体的な取り組みについては、既に報道されているので他稿に任せるとして、ここではその前提として「クラウド時代のSI(システムインテグレーション)に求められるものとは何か」について同社の見解を聞くことができたので、ポイントをピックアップし考察してみたい。
本題に入る前に、説明会の冒頭で同社におけるクラウドの商談状況と市場予測が示されたので紹介しておこう。サービスビジネス本部長を務める阿部孝明 常務理事の説明によると、2009年4月にクラウドサービス、10月に企業内クラウドを発表して以来、クラウドに関連した新規商談案件は現在800件を超えた。
内訳はクラウドサービスが83%を占め、企業内クラウドは17%にとどまっているが、直近では企業内クラウドが増加傾向にあるようだ。また、クラウドサービスでは84%が共通基盤での利用だが、サーバや回線種別などの顧客要件による個別ホスティングも16%あるという。
商談傾向として興味深いのが、利用目的および利用用途における変化だ。利用目的としては、もともとクラウドに対しては、特に経営層がコスト削減への意識を強く持っていることから、「コスト削減・運用スリム化」が64%を占める。これに「基盤標準化・共通化」24%、「開発・ディザスタリカバリ・新規事業創出」12%と続くが、最近ではこの2つを目的とする傾向が強まっているとしている。
一方、利用用途では、今年4月の時点で「検討中」だった商談が6割以上あったが、今ではそれが1割以下になっており、用途が明確化してきているという。
国内のクラウド市場の予測については、クラウドサービスが2008年から2015年にかけて約16倍に拡大し、IT市場全体に占める比率も2割を超えるというのが同社の見立てだ。さらに内外の市場調査を基に、ユーザー企業はクラウドに対して、セキュリティやサービス品質、他システムとの連携、サービスの継続性といった点にとくに懸念を持っていると指摘し、そうした面からも「国内ITベンダーへの期待は非常に高い」(阿部常務理事)と強調した。
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