さて本題の「クラウド時代のSI」についてだが、同社システム生産技術本部の柴田徹 本部長は、その事業領域を従来のバックエンド系(基幹系)とフロントエンド系、そして新たな市場となる広域系(ネットワーク・社会インフラ)の3つに分けて説明した。
まず、クラウドにおいてもミッションクリティカルでデータ保全性の高さが要求されるバックエンド系では、既存のシステムをクラウドの基盤に移行していくSI、基幹系のデータベースを中心としたSI、大量データを管理するシステムのSIが求められるとした。安くて短期間に操作性の高いシステム構築が要求されるフロントエンド系では、顧客のビジネスをSaaS化するSI、社内システムの操作性を向上(Web化を促進)するSI、データ活用を実現するSIが求められるという。
そして、センシング・RFID・ネットワークといった新技術を適用する広域系では、センシングやスマートグリッドなど業種特有の最先端技術を駆使したSI、末端からのデータ収集の仕組みを構築するSIが求められるとした。その上で柴田本部長が「最も重要」と強調したのが、これら3つの事業領域を連携させたハイブリッドクラウドへの対応だ。この領域では、3つの事業領域を合わせた高信頼のトータルSI、クラウド上のミッションクリティカルシステムのSI、クラウド同士を融合・結合したシステムのSIが求められるようになるという。
これらを踏まえ、柴田本部長はあらためてクラウド時代のSIに求められるベンダーの技術として次の3つを挙げた。
クラウド時代のSIに対する富士通の説明をかいつまんで紹介してきたが、要するに「システムづくりにおける仕事内容は変化しつつも、クラウド時代にもSIが果たす役割は大きい」というのが同社の見解だ。
ただし、仕事内容は変化する。富士通はこれを「サービス型インテグレーションビジネスへの転換」としているが、このことはSIを生業にしてきたベンダーすべてに当てはまる。2010年、この転換を果たせるかどうかが国内IT産業の盛衰の鍵となりそうだ。
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まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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