水田の再生に「人と地球にやさしいICT」を目指す姿を見た――NEC岩波取締役 執行役員常務に聞く日本のCGO(2/2 ページ)

» 2010年01月08日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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具体的かつ地に足の着いた、環境対策と意識付けが重要

 環境の人材育成が成果を上げる中で、同社が現在力をいれているのが、環境で事業競争力を高める活動だ。そのきっかけとなったのが、「NECグループビジョン2017」だと岩波氏は指摘する。

 NECグループビジョン2017では「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」になることがうたわれている。「人と地球にやさしいためにICTがどうあるべきか、という議論の中で、環境面から貢献する姿を明らかにしてきた」(岩波氏)という。

 これはNECが持つ30年以上にわたる環境活動のノウハウや、創業以来培ってきた情報通信技術、その結果生まれた製品やソリューションを総合し、地球社会に貢献しようという事業コンセプトにも通じている(くしくも現在、IBMが展開するSmarter Planetに通じる理念ともいえよう)。

 NECの環境事業のコンセプトでは、人と自然を、産業/業務/エネルギー/運輸/家庭という各分野に結びつけるハブとして、ICTを定義している。この枠組において岩波氏は「欧米の受け売りではない環境対策を、日本初、NEC発で定義していきたい」と期待を込める。

 このようなビジョンは、ともすればトップダウン的に叫ばれるのみで、現場に浸透しないケースも有る。だが岩波氏は「単なる掛け声で終わらせないため、立場や部署を超えたのべ数千人の従業員と、対話してきた」と話す。

 掛け声では終わらない――この意識が、設計開発陣に浸透することで生まれた製品もある。NECでは、従来モデル比のCO2排出削減率が50%を超える製品に限定し「エコシンボルスター」の名称とロゴを付与しているが、例えばExpress5800シリーズのサーバ、その名も「ECO CENTER」において、54%の省電力、50%の省スペース、60%の軽量化を達成した。

 ECO CENTERは、今になってラインアップした製品ではない。「従来から、省電力をうたって市場投入していた製品なのに、さらに従来比50%を超える削減を果たしたのは快挙」と岩波氏は評価する。

収穫された酒造米は、地域の蔵元によって日本酒に醸造される――

 ITソリューションにも「エコシンボルスター」を導入している。これは、ユーザーが導入することでCO2排出を50%以上削減できるソリューションを認定するもの。「最近ではユーザーのCO2削減に対する意識も高まっている。今からエコシンボルスターを増やすことは、これからの事業成長には欠かせない要素だ」と岩波氏は話す。

 また、NECでは「長年の環境活動ノウハウを生かした」(岩波氏)とする“環境情報ソリューション”を取り揃えており、同氏が主導する形で推進している。「環境情報ソリューションは単にシステムを売るのではなく、NECの業務ノウハウも提供している」(岩波氏)。

 環境への意識を社員に浸透させるには、eラーニングなどが有効な手段となり得る。だがNECはそれにとどまらず、自然と、地に足の着いた形で、従業員が環境貢献を図れる施策を打ってきた。

 例えばオーストラリアにあるカンガルー島。そこではNECの製品が出荷されることに連動し、植林が行われている

 2008年度までに約93万本が植林され、東京ドーム約2300個分に相当する「NECの森」を生む予定だ。もちろんこの植林では、CO2の削減(吸収)効果が見込まれ、その量は開始後20年間で約100万トンを見込むという。

 また国内では、NPO法人と協力し霞ヶ浦近郊に眠っていた廃耕田(捨てられた水田)の再生プロジェクトを開始。「活動1回当りの定員は200人前後だが、毎回、即日定員が埋まる」(岩波氏)といい、開始5年間で約5500人の従業員が参加。今では廃耕田だった場所からの収穫で、お米はもちろん日本酒や味噌作りも行われ、100年後にはトキの自然再生を図るという、夢と実を備えたプロジェクトに成長した。


 他分野の環境負荷を改善する、実践的かつ有効な手段――掛け声で終わることを良しとしないNECのICT事業は、その廃耕田再生活動のように、社会に豊かな実りをもたらす。

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