コラム
» 2010年01月13日 08時00分 UPDATE

Architecture for Modular Data Centers:全方位から検証するコンテナデータセンターの優位性 (1/2)

データセンターの構築、管理、増築にフル実装した搬送用コンテナを利用するという提案は、果たして賢者の選択なのだろうか? 本稿では、さまざまな角度からコンテナデータセンターの真の姿を明らかにしていく。

[James Hamilton,ITmedia]

はじめに

 本稿で紹介する論文「Architecture for Modular Data Centers」は、ジェームズ・ハミルトン氏が2007年1月に発表した、コンテナデータセンターの優位性を示すものです。同氏は、Microsoftにおけるデータセンターアーキテクチャの責任者を務め、その後、Amazonの役員に就任した人物です。移籍の後も、AFCOMやGoogle Data Center Summitで講演するなど、未来のデータセンター像を模索するアーキテクトたちに、有益な情報を提供しています。

 「データセンターのシステムパッケージングに対する発想の転換」では、最新のデータセンターの多くが、汎用のコンピューティングクラスタで構築されていること、また、こうしたトレンドの要因について解説しました。今回は、データセンターの構築、管理、増築にフル実装した搬送用コンテナを利用するというハミルトン氏の提案について、さまざまな角度からその効果を考えます。

3:ソリューションの提案

20フィートのISO 668 搬送用コンテナ 図1:20フィートのISO 668搬送用コンテナ

 最近われわれが展開した[14]小規模なものを含め、世界中のあらゆるサービスがデータセンターを利用している。例えば、パリでキャパシティを拡大しようとすれば、莫大なコストが掛かるだろう。マシンをパリに送り、税関をクリアした後に、データセンターに配送しなければならない。続いて、データセンターに搬入し、ラックにマウントし、電源を入れ、検証し、さらには、資産管理のためのラベリングまで必要になる。この一連のプロセスでは、各システムを発注し、出荷するためのコストのほかに、ローカルでの熟練した労働力も必要とされる。さらに、故障したマシンをサポートするためにデータセンターに常駐する人員が必要となり、そのことがコストを高め、また、管理上のエラーを増やすことになる。

 本稿で提案しているソリューションは、システム単体やラックに組み入れたシステムの構築や搬送をやめようというものだ。それらの従来の方式に代えて、無数のシステムで構成したマクロモジュールを出荷していくものとなる。この新しい方式では、20フィートの標準的な搬送コンテナ内に、個々のモジュールが構築される(図1)。

 そして、各種の設定と電源のテストを完了した、コンピューティングとネットワーキングの機能を持つ、すぐに運用できるモジュールが、そのほかのサービスが不要なパッケージとして提供される。このコンテナには、電源、ネットワーク、水冷システムといった必要なものすべてが含まれる。

 この提案に対して最も多く寄せられる懸念は、それぞれのアプリケーションが、きわめて異なるハードウェア要件を持つというものである。しかし、インターネットスケールのサービスでは、選択されるのは一般に1種類あるいは数種類の汎用ハードウェア・ビルディング・ブロックであり、サービス全体で、それらのコンポーネントが繰り返し使用されている。例えば、MSN Searchでは、そのコア・ビルディング・ブロックとして、2ウェイのx64システムを使用している[19]。Googleの最新リポートでは、同社は2ウェイの32ビットIntelベースの汎用システムを、コアコンピューティング要素として使用している[17]。ただし、Morgan Stanleyの2006年3月のリポートでは、Googleは既に64ビットAMD Opteronへ移行したとされている。

 1万〜10万ノードのクラスタを、コスト面で効果的に運用する唯一の方法は、すべてのソフトウェア管理を自動化することである。この規模の分散アーキテクチャを採用した、GoogleやWindows Liveといったサービスでは、そのインストールや、アップグレード、問題点の検出/修正といったソフトウェア管理の大半が自動化されている。

 ただし、日常的なソフトウェア管理タスクが自動化され、データセンターが完全な自動モデルに移行しても、自動化できないタスクとして、ハードウェアの管理が残される。つまり、インストールや設定、問題の測定、修理、置き換えなどに対応していかなければならないのだ。こうした状況を踏まえて、本稿では、こうしたハードウェア管理タスクの低減および排除を目指す。

3-1:コンテナの出荷と回収

 搬送用のコンテナは、本稿で提案するソリューションにとって理想的なものだ。比較的低価格で、堅ろうである。新品でも1950ドルで購入でき、中古であれば1500ドル前後となる[11]。

 コンテナは、過酷な条件の中でデリケートな商品を無事に輸送できるように設計されており、荒れた海を航行する貨物船のデッキで何週間も過ごし、激しい風雨にも耐えられるようになっている。さらに重要なのは、それらが世界的に認識されていることである。つまり、どこの貨物センターにもコンテナを取り扱うための適切な装置があり、頑丈なフォークリフトによる安全な移動や配置が可能であり、さらに、どのような場所にも配置できるようになっている。

 コンテナは、陸路であれ海路であれ、高い費用対効果での搬送を実現するようになっている。データセンターへの最終的な搬送は、鉄道や商用トラック輸送で簡単に行える。コンテナは、ネットワーク機能、水冷システム、電源を備えたセキュアなロケーションのどこにでも配置でき、ハードウェアメンテナンスを必要とせずに、耐用年数分だけ稼働するだろう。

 大規模なインターネット資産を所有する多数の企業が、経費を削減するために、この方向へ向けてかじを切っている。すなわち、システムを個別にパッケージするのではなく、製造業者にフルラックを注文している。

 本稿では、こうした動きをさらに一歩進め、フルネットワークと冷却装置をサポートする搬送用のコンテナ内に構築する完全なシステムを提案する。このシステムであれば、パッケージングの必要もなければ、輸送のために改めてコンテナに積む必要もない。目的地に到着したときにも、そのパッケージを解く必要はなく、データセンターにインストールする必要もない。このコンテナは、そのままネットワーク、冷却水、電源に接続できる。

 それぞれのモジュールには、ネットワーク装置、コンピュータノード、永続性記憶装置などが組み込まれている。各モジュールは充分な冗長性を持ち、部分的な障害が発生した際にも、負荷を肩代わりするノードが継続して生き残る。

 このシステムの管理モデルは、大半のインターネット規模のサービスで使用されている標準的なリブートやイメージ復元、置き換えのモデルとほとんど同じである。唯一の相違点は、障害が生じた個別のシステムを置き換えないことである。構成要素であるコンポーネントに対してサービスが提供されることはなく、回復不能なハードウェアエラーがシステム内に生じるにつれて、モジュール全体が緩やかに機能を停止していくのだ。

 仮に、回復不能なハードウェア障害が50台で発生しても、1000台のシステムモジュールを前提とすれば、もともとの設計能力の95%がまだ稼働していることになる。原則的な要件は、個別のノードにおける障害が全体的なサービスの可用性に影響を与えないように、ソフトウェアアプリケーションに充分な冗長性を実装することである。

 こうしたアプリケーションにおける冗長性の問題は、ステートレスな処理ノードとして理解されており、大半のインターネットスケールのシステムが、そのように稼働している。それ以上に難しい問題はステートフルなアプリケーションで、ステートをディスクにセーブする場合もあれば、コール間の回復不能なステートに依存している場合もある。そのための解決策の1つは、永続性のあるステートを、シングルポイントの障害を共有しない、多数の冗長性システムに書き込むことである。おそらく、Google GFSは、この大規模スケールのデザインパターンにおいて、最も広く知られている共通の例である[7]。

 残念なことに、冗長性のあるアプリケーションステートの割り当てには、ソフトウェアに対する相当量の投資のほかに、物理的なネットワークとハードウェアトポロジーに関する知識が必要となる。例えば、冗長的なコピーは、同じスイッチの上の同じラックや同じコンテナに保存することができない。ここで提案するアプローチでも必要な操作は変わらない。ここで提案しているのは、頑丈なパッケージにインストールされた、大規模で均一なストレージのリソースである。それにより、ソフトウェアの課題が簡単になることもなければ、難しくなることもない。

 サービスの耐用年数が終わると、コンテナはリサイクルのために供給元に返送される。最新のテクノロジーに大きく依存することもないため、5年の耐用年数が可能かとも思えるが、一般的には耐用年数は3年である。

 リサイクリングにおいて、コンテナは最新のパーツを再装てんされる。再利用できない部品は再生処理される。このモデルは、幾つかのアドバンテージをもたらす。1)システムの提供時において、パッケージを解いてラックマウントする必要がない。2)運用時においてシステムに対するサービスが不要である。3)ライフサイクルの最後において、ユニットの再構築とリサイクルのために製造業者に返送すればよく、そのときにもラックからの取り外しや再パッケージングは不要である。

3-2:コンテナの経済性

 データセンター拡張のモジュールとしてのコンテナを広範に利用することで、実質的な規模の経済が見込まれる。例えば、製造原価を低減するために、自動化された組み立てと分解の技術を利用できる。そして、フィールドメンテナンスの準備をせずに、システムを密にパッケージできる。製造業者はフィールドメンテナンスのためのトレーニングやパーツを提供する必要がない。あるいは、費用が掛かり間違いを犯しやすいフィールドサービスの実施を回避できる。

 さらなる利点としては、コンテナは、米連邦通信委員会(FCC)のコンプライアンス認証における単一のユニットとして取り扱えることである。同様に、輸入に際しては、それららを1000以上の個別のシステムとしてではなく、1つのユニットとして取り扱うことができる。

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