ビジネス“ワン”に学ぶ、企業と社員ができるCSR活動盲導犬の今(2/2 ページ)

» 2010年01月16日 01時45分 公開
[山本恵太,ITmedia]
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進まない障害者雇用

 日立情報システムズでは、CSR活動の一環として障害者雇用に力を入れている。実際、2007年は96人(法定雇用数92人)、2008年は99人(同97人)を雇用した。

 一方、厚生労働省が2009年11月に発表した障害者の雇用状況を見ると、法定雇用率を達成している民間企業(56人以上規模)は45.5%にとどまっている。また「身体障害児・者実態調査(2006年)」では、全国の視覚障害者数は約31万人と報告されている。盲導犬を必要とするのは「約7800人」(1998年 日本財団調べ)であるのに対し、日本で活動する盲導犬は現在1045頭になるという。企業のCSR活動とも関連のある障害者雇用には、盲導犬を含む補助犬の育成が急務となっている。

 盲導犬の普及を支援する活動は、企業主体のものだけでない。普段は障害がある学生の就職活動の相談に力を入れている穂刈さんだが、週末は盲導犬の仕事を紹介する活動に取り込んでいる。「僕のライフワークですから」と笑う穂刈さん。こうした草の根の活動が、盲導犬育成に一役買っている。

 個人でできる募金活動もその1つだ。代表例は、日本盲導犬協会が実施している「ラブラドール募金箱」である。不特定多数の人が出入りする場所に置いて募金を募るもので、企業が受付などに設置できる。ラブラドール募金箱の設置数は全国で1万8403個(2009年3月31日現在)あり、2008年度は1億6323万3984円の募金が集まった。1頭につき約300万円掛かる盲導犬育成の資金源は、企業の枠を超えた一人一人の募金活動によるものだ。

企業が取り組む盲導犬の啓発活動

 企業が外部に向けて盲導犬の啓発活動に力を入れるケースもある。「盲導犬キャラバン」を手掛けるNECだ。日本盲導犬協会のパートナー企業として、1997年から盲導犬の育成や募金活動を支援している。将来盲導犬になる子犬を家庭で約1年間育てる「パピーウォーカー」と呼ぶボランティア活動も実施、これまで3人の従業員が家族とともに育成に携わってきた。

 2008年度からは、小中学校で盲導犬の普及を促す「NEC 盲導犬キャラバン」も支援している。日本盲導犬協会のスタッフ、ボランティア、盲導犬ユーザーを含むキャラバン隊が、盲導犬の講義や歩行体験のデモンストレーションを行う活動だ。2009年度は34校で実施する予定としている。

NEC 盲導犬キャラバンの様子 NEC 盲導犬キャラバンの様子

企業、人と盲導犬

 2002年に施行された身体障害者補助犬法が定義した補助犬は、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種である。障害者雇用の創出には、今回取材した盲導犬に加え、介助犬や聴導犬の育成も欠かせない。しかし、これらは盲導犬以上に認知度が低く、実働数も少ない。

 補助犬の育成は簡単なことではない。補助犬として働いているのは、訓練を受けた犬である。そして彼らは、本来なら人と人の助け合いで解決すべき問題をサポートしてくれている。

 日立情報システムズの盲導犬受け入れ、日本盲導犬協会の募金活動、NECのキャラバンからは、企業や社員一人一人ができるCSR活動の一端が見えてくる。盲導犬の普及や育成に取り組むことは、誰もが平等に働ける社会基盤作りにもつながっていくだろう。

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