登場し始めた中堅・中小企業向けプライベートクラウドサービスの背景Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2010年02月01日 08時21分 公開
[松岡功ITmedia]
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中堅・中小もプライベートからハイブリッドへ

 中堅・中小企業向けプライベートクラウドサービスとしてもう1つ注目される商品を挙げておくと、大塚商会が1月18日に発表した「たよれーるマネージドネットワークサービス(仮称)」の第1弾商品がある。

 このサービスは、KDDIの新型ネットワークサービス「KDDI Wide Area Virtual Switch(KDDI WVS)」をネットワークプラットフォームとして利用し、ユーザーと大塚商会のデータセンター(統合監視センター)を閉域網で接続することにより、高いセキュリティが保たれた状況で各種サービスを利用できるようにした。

 また、ユーザーが所有する機器やアプリケーション、システムの運用管理を統合監視センターで行うため、ITシステムの構築・運用コストを削減することができるとしている。新サービスの基本メニューとしては、ファイアウォール/Webウイルス検知などのサービスを含めたインターネット接続、複数拠点間の接続、10GBのオンラインストレージを用意。価格は月額1万9800円からで、初年度1500社への販売を見込んでいる。サービスの提供開始は5月31日。

 さらに、Webフィルタリング、メールサービス「アルファメール プレミア」、グループウェア「アルファオフィス ギガタイプ/メガタイプ」、運用監視サービスなどのオプションも順次提供する計画だ。つまり、大塚商会のデータセンターで運用されるプライベートクラウドにKDDIのセキュアなネットワークサービスを組み合わせた格好だ。

 さて、NECと大塚商会の新商品を紹介してきたが、あらためてこれまで大企業向けが中心とみられていたプライベートクラウドサービスに、中堅・中小企業向けをうたう商品が登場し始めたのはなぜか。

 大塚商会によると「セキュリティの観点から自社の重要な情報資源をオープンなネットワークを経由して利用することを敬遠する企業が少ない」という。そこに着目したのが、まさに同社の新サービスだ。一方で、ベンダー側には明らかな狙いがある。サーバやストレージをユーザーに継続して販売するためだ。ベンダーにとってプライベートクラウドサービスは、ITリソースを自前で持つユーザーに向けたビジネスで、つまりは従来のシステム構築サービスの延長線上にある。

 しかし、そんなベンダーの思惑だけではなく、どうやら中堅・中小企業向けプライベートクラウドサービスにもそれなりの需要があるのだろう。ここにきて同サービスの新商品が相次いで登場しているのがその証左だ。おそらく中堅・中小企業にとっても、大企業と同様にプライベートクラウドからハイブリッドクラウドへ移行していく道筋ができてくるのではないか。

 かつて本コラムで「プライベートクラウドはクラウドか」と題して疑問を投げかけたが、何とも微妙な思いではある。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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