デスクトップの仮想化を快適にする――シンクライアントベンダーのアプローチ

シンクライアントベンダーの米Wyse Technologyは、企業導入が注目されるデスクトップ仮想化について、ユーザーの使い勝手を高める新たな戦略を展開する。戦略およびマーケティング最高責任者のマクノート氏が詳細を紹介した。

» 2010年02月05日 08時15分 公開
[國谷武史,ITmedia]
マクノート氏

 シンクライアントベンダーの米Wyse Technologyは、仮想化の新たなテーマとして注目されるデスクトップの仮想化に対して、ソフトウェアベースによるエンドポイント環境の改善や、データセンターのリソースの低減といったソリューションを展開する。同社の取り組みをこのほど来日した戦略およびマーケティング最高責任者のジェフ・マクノート氏が紹介した。

 デスクトップの仮想化は、サーバ統合と同様に企業のクライアントをデータセンターに集約することで運用管理コストの削減、また、データ本体を集中管理下に置くことでのセキュリティレベルの向上といったメリットが期待されている。

 同社はこれまでに約800万台のシンクライアント端末を供給するなど、専業ベンダーとして高いシェアを持つという。マクノート氏は、「市場では仮想化やクラウド、グリーンITが注目され、シンクライアントとも密接な関係にある。これらのメリットをユーザー体験に結び付けられるのが専業としての強みだ」と話す。

 実際のデスクトップ環境をリモートで利用するシンクライアントは、同氏が挙げた3つのキーワードを具現化した1つの例とも言え、コスト削減やセキュリティ強化、柔軟なワークスタイルへの対応といった企業ニーズを解決する手段として期待された。だが、これまでは大規模なシステムを構築しなければならず、また、ネットワーク遅延などで実際のデスクトップと同等の業務効率を確保できないなどの問題があり、導入に慎重な企業も多い。

 「クライアント側では、独自の“Thin OS”を中核にユーザー体験の向上に注力してきた。起動時間が短く、クローズドなOSなので不正プログラムが混入する危険もほとんどない。ハードウェアは長寿命設計と低消費電力、チップ処理によるパフォーマンス向上を図っている。これらを生かすためにソフトウェアベースの新たなソリューションに着手した」(マクノート氏)

 同社では、長年CitrixやVMware、Microsoftなどと提携関係にあり、デスクトップの仮想化でも各社と歩調を合わせながらソリューション開発を進めてきたという。具体的な成果として、2007年にはマルチディスプレイやUSB機器、Flashコンテンツ再生、VoIPなどのリッチコミュニケーションをサポートした「TCX」技術を導入。現在までに、最大10万台までの端末の一元管理やデスクトップイメージをリアルタイムに配信する「WSM(Wyse Streaming Manager)」、デスクトップイメージの配信を高速化する「VDA」などを開発・提供してきた。

 これらのソリューションは、各社の仮想化プラットフォームとの親和性を十分に考慮しているといい、マクノート氏は、「例えばWSMではユーザーがアクセスした時点でイメージを配信するため、イメージを蓄積するストレージ容量を大幅に削減できる」と話す。また、クライアント側では専用端末に加えて、これらのソリューションを生かすためのソフトウェアを既存のノートPCやiPhone、Netbookなどにも広げつつある。

2010年に展開するデスクトップ型端末「C class」(右下)とラップトップ型「X90cw」。C classは3月に日本語版をリリースする

 マクノート氏は、今後クラウドコンピューティングの普及が進めばこうしたソリューションの役割がますます求められると述べ、シンクライアント単体からデスクトップ仮想化へより踏み込んだ戦略を展開していくとしている。

 現在、米国では通信事業者やケーブルテレビ事業者と共同でデスクトップ仮想化のクラウンドサービスについて実証実験を進めている。「ノートPCを持っていない加入者に端末を無料で貸し、クラウド型データセンターにある仮想マシンを月額で使ってもらえるよう検討している」(同氏)

 今後は企業およびコンシューマーサービスの両面でシンクライアント技術をベースにしたソリューションを展開する方針だという。

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