「未来産業」のゆくえ伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年02月09日 16時30分 公開
[伴大作,ITmedia]

都市再開発

 建築会社の手先になる気はないが、日本の都市のつくりは諸外国と比べても効率が悪い。おそらく欧州は歴史的に主要な交通手段が馬や馬車であったのに対し、日本を代表とするアジア諸国は交通手段として、徒歩のウエートが高かったためかもしれない。そのため、やたらに階段がある。坂なら、車輪を使う手があるのだが、徒歩を前提とした社会インフラはどうにもならない。当然、道幅も狭い。

 お隣の韓国は、その辺に気づいていて、主要道路の拡幅をこの10年間真剣に行ってきた。日本はその間、地方都市を結ぶ高速道路の建設に熱心で、肝心の大都市内部の道路整備を怠ってきた。

 高齢化がますます進み、障害者が増加しているのに、道路を代表とする社会インフラが今のままでは、結局、社会的に大きな損失が発生する。地価の高い住みにくい町は廃れていく。地方の駅前商店街をシャッター通りと呼び、その寂しい景色を哀れんでいるが、大都市部でも同じような現象は進行している。

 若い単身者は、生活コストが適当で、気軽に外食できる街に住もうとし、家族のある人たちは、生活環境、教育環境の良い郊外に、年配の人達は、それまで彼らが住んでいた街に取り残される現象が起きている。つまり、世代間で住む場所に違いが起きているのだ。

 もちろん、都心に住もうという動きがないわけではない。そのような場所の大半は都心に近い埋立地か大きな工場が移転した空き地を再開発した場所だ。つまり、再開発をしなければ、今の大都市はやがて荒廃し、廃れる運命なのだ。

 大都市に再度、活力を取り戻すのは大変な費用を要する。しかし、これは、投資に値する未来産業だ。その過程で、省エネルギー、高度な土地利用が図れるなら、未来の都市構築技術を手に入れることができる。それにより、世界をリードすることはたやすい。

 肝心の産業規模の話だが、当然の事ながら主要な道路の高架化や拡幅、駐車場整備、鉄道駅の改修、公共建造物の移転、新築など大規模な投資が発生する。その投資規模は中国の上海や北京、ソウル、シンガポールなどを参考にすると数十兆円規模となるはずだ。

 もちろん、投資に対するリターンもそれなりに期待できる。恐らく交通渋滞が解消し、市中を走る車の平均走行速度が上がり、信号待ちが減少するだけでも、燃費の向上によるコスト削減効果は総投資額の10%程度にはなるはずだ。もちろん、住民の都心回帰により、商店などの経済活動が再活性化するのは言うまでもない。

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