日本IBM 橋本社長の揺るぎないファーストプライオリティ

日本IBMの橋本孝之社長が2010年の経営方針を説明。最優先事項として「自由闊達な企業文化の醸成」を強調する。2009年からこだわってきた同社の礎作りを継続し、グローバルで勝つ企業作りを崩さない。

» 2010年02月15日 15時47分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「わたしの優先順位では常に、自由闊達(かったつ)な企業文化の醸成が1位だ」――。日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の橋本孝之社長は、2月15日に開催された2010年の経営方針説明会で、企業風土の改善を継続する姿勢を見せた。

日本アイ・ビー・エムの橋本孝之社長 日本アイ・ビー・エムの橋本孝之社長

 日本IBMの2009年の方針は、「新規ビジネスの拡大と協業の強化」「顧客への価値創造」「自由闊達な企業文化の醸成」の3点だった。中でも橋本社長は企業文化の改善を第一に掲げる。「社員が元気でなければ顧客も満足しないし、ビジネスの成果も上がらない」(同)

 この考えを浸透させるために、2009年は社員を正当に評価する仕組みを作った。1つは「バリュー・プログラム」と呼ぶオンデマンドの表彰制度の全社展開だ。これは「社員がクライアントファースト(顧客最優先)で仕事の成果を上げた時に、ラインマネジャーが御礼のメールと3000円相当の記念品が当たるURLを送る」(橋本社長)もの。所属部門以外の社員への評価も可能で、これまでに全社員の30%が受賞したという。

 「上司や他部門のラインマネジャーが評価してくれたことが、社員のモチベーションになる」と橋本社長。頑張った社員を公正に評価することで、社内の結び付きを強化する。

 多様な働き方を認めていくのも特徴だ。2009年6月には「ホーム・オフィス制度」と呼ぶ係長以上の役職向けの制度を開始。月1回の出社以外は在宅勤務を認めるもので、現在30人が利用している。今後は全社員への展開も検討していくという。

 海外拠点に社員を赴任させる短期プロジェクトも実施。2009年は32人を送り込んだ。「日本IBMをよりグローバルに」というスローガンを旗印に、世界で通用する人材を育てる考えだ。

2010年も企業風土の改善を進める

 2010年も引き続き、企業文化の改善を最優先していく。現場のリーダーシップを発揮させるために、「勤務時間の70%を顧客や現場の社員に使う」という方針を立てた。また、「1日最低2時間からの勤務時間を設定する」短時間勤務制度の実現に向けて、社内でパイロットテストを行っている。

 人材育成では、「教育に時間とお金をかける」(橋本社長)。具体的には、同社が2010年の強化分野として掲げる「クラウドコンピューティング」および「BAO(Business Analytics & Optimization)」に長けた人材を育成するため、全社員にスキル研修を実施していくとしている。

 2010年の方針説明において、橋本社長は「自由闊達(かったつ)な企業文化の醸成」を繰り返し強調していた。社内改善から企業の足場固めをする取り組みは、橋本氏が日本IBMの社長就任後に開かれた2009年の方針説明会でのアナウンスから一貫して変わっていない。



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