通信関連市場の現状と将来の展望：アナリストの視点（2/2 ページ）

[菅又和彦（富士キメラ総研），ITmedia]

通信サービス市場の概況

　2008年度の通信サービス市場は11兆7547億円となり、前年度より約2070億円縮小した。各移動体通信キャリアがサービス料金の割引／定額プランを展開したことで、移動体通信サービス市場が大きく落ち込んだことが原因だ。

　2013年度には11兆6107億円の市場規模になる見通しだ。各通信キャリア／サービスプロバイダーによる価格の低廉化競争、ユーザーの音声通話サービスの利用減により同市場が縮小する。一方、インターネット接続サービス市場および会議系／映像系サービスの市場は好調を維持する。FTTHサービスの利用増、出張費の削減用途での会議系サービスの利用増、各通信キャリア／サービスプロバイダーのプロモーション強化及びコンテンツラインアップの充実による映像系サービスの利用増が見込まれるからだ（図2）。

図2：通信サービス市場規模の推移予測（富士キメラ総研『2009 コミュニケーション関連マーケティング調査総覧（下巻:通信サービス編）』）

　表4は、同市場のサービスをカテゴリーごとに分けたものである。また表5は、各市場動向の詳細と今後の展望をまとめたものだ。

カテゴリ	対象サービス
インターネット接続サービス	ADSL、FTTH、CATVインターネット、法人インターネット、公衆無線LAN、ダイヤルアップ接続、IPv6、ISP
移動体通信サービス	携帯電話、PHS、WiMAX、MVNO、FMC（個人向け）
固定データ通信サービス	IP-VPN、広域イーサネット、インターネットVPN、フレームリレー／セルリレー、専用線、映像伝送
国際通信サービス	国際IP-VPN／国際イーサネット、国際専用線、国際フレームリレー／国際セルリレー、国際電話
音声関連サービス	IP電話、IPセントレックス、モバイルセントレックス、加入電話／ISDN、直収電話、CATV電話
会議系／映像系サービス	テレビ会議多地点接続、Web会議、音声会議、映像配信
表4：通信サービス市場の対象サービス

市場	2008年度の市場規模	背景（2008年度）	2009年度以降の市場規模の見通し	背景（2009年度以降）
インターネット接続サービス	拡大	FTTHサービスが、ADSLサービスやインターネットを利用していない人の需要を取り込んだ	拡大	ブロードバンドサービスの成熟化でFTTHサービスの成長率は鈍るが、ADSLサービスやインターネットを利用していない人の需要を継続的に取り込むことで、成長が続く
移動体通信サービス	縮小	携帯電話の各キャリアが割引／定額プランを展開したことで、携帯電話サービスの市場が大きく落ち込んだ	縮小	WiMAX／次世代PHS／LTEサービスをはじめとするデータ通信サービスの需要が喚起されるものの、割引／定額プランの継続によりARPUが減少する
固定データ通信サービス	堅調に推移	レガシーの部類に入る専用線サービスからVPNへの入れ替えが進んだ	横ばい	入れ替えの一巡が見込まれるが、データセンターやSaaS（サービスとしてのソフトウェア）の普及に伴い、広帯域回線の利用も拡大
国際通信サービス	縮小	利用者が減った国際通信サービス市場は、利用者による割引要求が増えた。国際電話サービスではサービスの低価格化が進んだ	縮小	レガシーサービスからVPNサービスへの入れ替えが見込まれるデータ通信サービスはおおむね横ばいだが、電子メールや携帯電話サービスの利用から国際電話サービスが減少する
音声関連サービス市場	縮小	加入電話／ISDNサービスから0AB〜J-IP電話サービスや新型直収電話サービスへの入れ替えが進んだ	縮小	入れ替えは継続するが、通話時間の減少や移動体電話サービスへの移行が進むため
会議系／映像系サービス市場	拡大	出張コストの削減やパンデミック対策の増加	拡大	パンデミック対策の需要が一巡し、会議系サービス間などの競争が激化することでサービスの単価が下落する
表5：通信サービス市場における市場ごとの市場規模推移

注目サービス

サービス	2008年度金額	2013年度金額	2008〜2013年の増加額
FTTHサービス	6770	1万4070	7300
0AB〜J-IP電話サービス	1990	4000	2010
WiMAXサービス	−	865	865
表6：通信サービス市場における注目サービス（単位：億円）

　表6は、2008年度から2013年度にかけて市場拡大が期待されるサービスを挙げたものだ。具体的にはFTTH／0AB〜J-IP電話／WiMAXサービスが当てはまる。

　FTTHサービスでは、ブロードバンドサービス市場が成熟していくことで、単年度で見た純増数は減少していく見通しだ。ただし、ADSLサービスからの入れ替え需要や新規利用者の取り込みが続く見込みであり、市場は成長傾向で推移すると考えられる。

　0AB〜J-IP電話サービスは、FTTHサービスの導入をきっかけに、NTT東西地域会社が提供するPSTN／ISDNサービス、050-IP電話サービスからの乗り換えが進むことで、市場が拡大していく。

　WiMAXサービスは、UQコミュニケーションズが全国展開するサービスにおいて、2009〜2010年度にかけてエリアが拡大し、利用も広がっていくと考えられる。ただし、LTEや次世代PHSといった競合サービスの勢力もあるため、エリアの早急な拡大が求められる。

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