コンピュータ御三家、新社長の手腕伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年03月08日 16時44分 公開
[伴大作,ITmedia]

3社のお家事情を反映した社長交代劇

 日立製作所の中西氏は、確かに情報通信グループ出身者ではあるが、HGSTの後、交通など社会インフラビジネスに転じ、英国の鉄道システム売り込みで手腕を発揮したと聞いている。同じように情報通信グループ出身の古川一夫元社長とはそのあたりが違う。古川氏は情報通信グループのことしか頭になかったから、サブプライムローン不況でどの部門も一斉に業績不振に陥ったとき、すべての部門から批判され、社長の座を追われた。

 ただし、川村新会長も、今や、日立製作所の稼ぎ頭に成長した情報通信グループとHGSTの意向を無視することはできない。それで、日立の伝統部門である強電部門にも受けが良く、「グローバル」な視点でも問題のない中西氏を社長に据えたと考えるのが至極自然だ。

 日立の中西氏に比べると、富士通の山本新社長の前途は多難だ。先代の野副社長が出した数多くの「お約束」の後始末をどうするかだ。

 僕は野副社長の日本の経営者にはない明確な「物言い」が好きだった。彼が発する言葉の中には明らかに「失言」ではと思われるものも数多く含まれていたが、マスコミ、顧客、社内スタッフ、いずれもが、富士通の方向性が明確に示されたことに対し、おおかた歓迎の姿勢だった。

 ただし、一部の人たちにとって、彼の言動はあまりにもあからさまであり、このため「社内の敵」をつくる結果にもなった。このような「獅子身中の虫」は、どの部署にも居たのだろう。野副社長の後を継ぐ、山本氏は大した後ろ盾もない中で、富士通の有力な部署をそれぞれ代表する副社長たち、しかも先輩に当たる人たちに取り囲まれ、果たして大胆な判断などできるのか甚だ疑問だ。

 彼が、リーダーシップを発揮できるようになるのは、一期2年を過ぎてからと考えるのが普通だ。それまで、世界、日本市場に大きな動きがなければいいが、現状を見る限り、すぐにでも対応に奔走しなければならないはずだ。また、野副氏解任劇に伴う、社内の疑心暗鬼をどうしたら払底できるのかも大きな課題だ。果たして、山本氏にその大役が果たせるのか大いに注目したい。

 NECの遠藤氏だが、彼が取り組む課題は山積している。まず、半導体部門をどうするかだろう。損益状況が半導体よりひょっとしたら劣るかもしれないPC部門をどうするのかという問題がある。自らの出身母体ではあるが、大きくメスを入れなければならないのは当然だが、果たして彼にそのようなことができるのだろうか。

 もちろん、シェアを侵食され続けている大型サーバ部門、日本市場を切り開いてあげたCiscoが富士通と手を組んだことによって劣勢に立たされているネットワークスイッチ部門、さらに日立と組んで設立した「アラクサラ・ネットワークス」の問題を早急に片付ける必要に迫られる。

 これらの問題は、彼がこれまで手掛けたマイクロウエーブ事業とはけた違いに複雑で、利益関係者も多い。彼の手綱さばきに注目が集まる。

 ただし、NECは、新社長に反対する勢力も見当たらず、ライバル2社と比べるとはるかに社内状況は安全だ。後ろから刺される危険性がないとなれば、相当思い切った手が打てるはずだ。遠藤氏の手腕に期待したい。

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