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クラウド体験を企業内で実現するための仮想化テクノロジーと管理ソフトウェアクラウドがもたらす“本当のメリット”(2/2 ページ)

» 2010年03月24日 08時00分 公開
[ITmedia]
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クラウド的ユーザー体験を企業で実現するには

 では、クラウド的ユーザー体験を企業として実現するためには具体的に何を行なえばよいのだろうか。「第一に、ITリソースを迅速に入手・配備でき、かつ、負荷の増減に応じて割り当てを容易に変更できること、第二に、業務システムの構築・更改を迅速、かつ、他に影響を与えずに行なえること」(稲場)が求められている。

 まず、第一の要件について検討しよう。このためには、企業内のITリソースを整理統合し、共用可能にして、動的に分配できるようにする必要がある。

 ここで重要となるのが仮想化テクノロジーだ。仮想化により、物理的なハードウェアとそこで稼働するソフトウェアの関係を切り離し、より柔軟なITリソース管理が可能になる。「プール化されたITリソースを必要に応じて迅速に配備・活用できるようになり負荷の集中に柔軟に対応できるようになります。また、ハードウェアの稼働率も向上するので、IT予算を効率的に活用できるようになります」(稲場)

 第二の要件に対応するためには、SOA(サービス指向アーキテクチャ)的なシステム作りが必要だ。つまり、アプリケーションを業務の視点から部品化し、柔軟に組み合わせて利用できるようにするということである。これにより、ある機能の変更のためにアプリケーション全体を作り直さなければならないようなケースを減少できる。特定のソフトウェア部品を修正したり、新たに開発したり、あるいは、購入したサービスと置き換えるだけで、ビジネス上の要求の変化に対応できるようになる。また、アプリケーションの機能をユーザーにとって最適な場所で稼働することも容易になる。

クラウド的ユーザー体験を支えるJP1

 クラウド的なユーザー体験を実現するためには仮想化テクノロジーを適切に活用する必要があるのは自明だろう。しかし、ここで1つの落とし穴がある。「ただ仮想化テクノロジーを配備したというだけではシステム管理がかえって複雑化してしまうリスクがあります。物理リソースと論理リソースの両方を管理しなければならなくなるからです。仮想化テクノロジーを効果的に活用するためには物理リソースと論理リソースを一元管理できる運用管理ソフトウェアの採用が不可欠と言ってよいでしょう」(稲場)

図2 仮想化によって生じる新たな課題

 日立の統合システム運用管理JP1は、まさにこのような一元管理を目標の1つとして設計されている。

 JP1の採用により仮想化ソフトウェアから構成情報を一括取得し、仮想マシンと物理サーバの対応関係を分かりやすく可視化することができるようになる(図3)。このような機能があってはじめて仮想化テクノロジーは最大限の価値を発揮でき、企業はクラウド的体験の実現に一歩近づくことができる。

 「これ以外にも物理サーバと仮想マシン両面での監視によるリソース配分の最適化支援など、JP1 は重要な機能を提供できます」(稲場)

図3 JP1による仮想化の課題の解決

 このように、企業はクラウドのテクノロジーだけでなく、それがもたらすユーザー体験にもフォーカスする必要がある。クラウド的ユーザー体験とは、ひと言で言えば、「システムの都合」に左右されず、人間が自由にシステムの価値を享受できるという体験である。このような体験を他社に先駆けて提供できた企業こそが競合優位性を獲得していくだろう。

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