クラウドコンピューティングの本質伴大作の木漏れ日(2/3 ページ)

» 2010年04月22日 08時00分 公開
[伴大作,ITmedia]

ネットワークのインパクト

 LANとインターネットの普及は、それまでの独自ネットワーク型/スタンドアロン型のシステムを根底から覆した。当初は社内で閉じられていたネットワークも、インターネットの普及により、それまでとは明らかに次元が異なる利用形態になっていった。

 インターネットの低価格化・広帯域化に伴い、多くの大型サーバがTCP/IPをプロトコルとする標準ネットワークに接続され、企業、個人のPCがインターネットを介して接続されるようになった。コンピュータとネットワークが融合したのである。世界中のコンテンツやサービスの利用を目的とするNetbookやスマートフォンも登場した。

 こうしてコンピュータとインターネットは「情報インフラ化」した。サーバ、クライアント、ネットワークは情報インフラを支える三大要素となった。

ソフトウェアの進化

 黎明(れいめい)期のコンピュータは、大量のデータ処理や計算といった人間の能力の代替処理を担っていた。コンピュータは「高性能算盤」「高精度計算尺」だったのである。

 その後ハードウェアの機能、性能の向上により、システムを構築するソフトウェアも劇的に変化した。COBOL言語を使用する「手組み」のプログラミングは主役の座から降り、スクリプト言語、パッケージ、フレームワークを利用する手法が主流に躍り出てきた。

 コンピュータの進化は、新たなソフトウェアの発展を促した。特定の人たちが使用するソフトウェアは、誰もが使うものに変化した。ネットワークの発展により、現在はWebベースのソフトウェアが主流になりつつある。ソフトウェアは、ここ20年でインフラ化したシステムを支える黒子になっていった。

ネットワークとクラウド

 ネットワークの広帯域化、価格低下、フラットレート料金体系の採用により、インターネットが爆発的に普及した。それに伴い、21世紀初頭はコンピュータ、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークがさらに変化を遂げた時代だ。だが、インターネットの普及で整ったのは最低限の条件にすぎず、パラダイムシフトが起こるには不足している。インターネットを有機的に利用するサービスやコンテンツが出てこない限り、十分条件がそろったとはいえなかったのだ。

 もちろん、ネットバブル崩壊前からサービスを開始していた米Amazonや米eBayのような企業(いわゆるeビジネス企業)もあった。これらの企業は21世紀初頭にインターネットが普及した途端、業績が好転し、数々のEC(電子商取引)ビジネスが一挙に花開いた。新世代のサービスを提供する米Googleのような企業も続々と誕生した。

クラウドの出現は歴史的必然

 クラウドは、このような歴史を踏まえた上で語られるべきものだ。

 ネットワークの進化はクラウドが普及する十分条件である。それまで独立していた個々のコンピュータは、数えきれないほどのインターネットに接続されたサーバにアクセスできるようになった。それらのサーバ上には特殊なミドルウェアが搭載され、クライアント側にあたかも1つのコンピュータにアクセスしているかのように見せる技術が誕生した。その機能や性能は、個人や企業が所有するコンピュータのレベルをはるかにしのぐ。

 これが「クラウドの正体」なのだ。クラウドは、単なる高性能コンピュータを指す言葉ではない。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークという3要素がすべてそろうという歴史的な必然によって誕生した、新しいパラダイムなのだ。

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