EMC、異機種混在ストレージを距離を越えプール化する製品を発表「他社技術に先駆けている」

EMCはストレージを透過的に共通プール化する製品「EMC VPLEX」を発表。他社ストレージもサポートする。

» 2010年05月19日 22時39分 公開
[石森将文,ITmedia]

 EMCは5月19日、製造元も設置されたロケーションも異なるストレージ間を透過的に共通プール化する製品「EMC VPLEX」を発表した。同日より販売開始する。

 VPLEXは、ディスクを内蔵したストレージ製品ではない。その特徴は、EMCジャパン 諸星俊男社長が「この技術の先進性は、他社に2、3年は先駆けている」と自信を見せる「分散ストレージ連携(フェデレーション)技術」にある。

EMCジャパンの諸星社長

 ここにきてサーバ仮想化の仕組みは、だいぶユーザー企業に浸透しつつある。だがそのメリットを最大限に享受するには、併せてストレージの仮想化が必要だ。そのため各ストレージベンダーとも、シンプロビジョニングなど仮想ストレージ技術の訴求に務めてきた。ただし当然のことながら、同一ベンダー機種内でしかボリュームを仮想化できないなどといった制限があるのが一般的だ。

 VPLEXはこういった制限を越え、ベンダーやアレイを問わないデータの透過的な移動/分散/共有/再配置を可能にする、いわばコントローラ製品だ(検証済み他社ストレージはEMCにより公開される)。アレイ間ミラーリングによってデータの筐体間冗長を実現したり、ボリュームの動的な構築を可能にしたりする。VPLEXには「Local」と「Metro」の2つのラインアップが用意され、Localは特定ロケーションのデータセンター内で、Metroは100キロメートルまでの距離間で、これらの機能を実現する。

 ストレージエンジンについては、EMCの“ファイブナイン(99.999%)”の可用性実績を有するものが使われ、保存場所に依存しないデータアクセスを果たす“分散キャッシュ連携技術”によって、全エンジン間のキャッシュ一貫性を担保する。

 利用モデルとしては、ボリュームに余裕がないデータセンターでさらにシステムを追加しなければならない場合、ストレージをほかのデータセンターに肩代わりさせ共有アクセスしたり、あるいは当初からデータセンター間のワークロードを動的分散できるような構成にしたりということが考えられる。もちろんロケーションをまたがる分散ミラーリングを行えば、データ可用性をさらに向上したり、ディザスタリカバリ環境を構築したりできるだろう。この場合EMCは、個別のレプリケーションツールを用いるよりも運用負荷やリスク、コストを抑えられるケースが多いと説明する。

 既にVPLEXは、米国AOLやオーストラリアのMelbourne ITなどで導入されており、EMCではロードマップとして、2011年にはよりサポート距離を拡大した「VPLEX Geo」を、そして将来的には「VPLEX Global」をリリースする予定だという。

 パワフルな一台のハードウェア上で複数の仮想リソースを動かすという手法は、あくまでも仮想化によるITリソースの統合(コンソリデーション)であり――それ自体は価値のあることだが――いわゆる“クラウド”というアプローチからは遠い。コンピュータシステムの主役がプロセッサからストレージに移りつつあるという見方もある今、分散環境にあるストレージを、筐体や距離、ベンダーまで超えて動的にプール化するというVPLEXのアプローチは、極めてクラウド的なものといえる。

 価格はVPLEX Localが税込929万円から、VPLEX Metro(2サイト分)が税込1726万円から(いずれも10テラバイトの仮想ボリューム管理用永続ライセンスを含む)。標準的な容量ベースのライセンスとして、またはVPLEX向けに設定された利用期間に基づく年間(サブスクリプション)ライセンス方式で購入きる。

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