一方で、次世代ホームネットワーク市場の拡大に向けた課題も多い。1つ目は、ホームネットワーク関連製品やサービスを提供する各事業者側にある。現状各社が独自機能の搭載やサービス提供を進めており、メーカーやサービス事業者の足並みがそろっていない。
主要メーカーは、デジタルテレビ、DVD/BDレコーダーなどのデジタル家電をリンク機能で囲い込んでいるため、HDMIやDLNAといった共通規格においても、メーカーごとに製品の使い勝手が違っている。また、他社製品との相互接続を保証している製品は限られており、接続がうまくいかない場合などにおいて、原因の所在を明らかにするのは難しい。
次世代ホームネットワークは、AV機器に加え、白物家電や住設機器などの機器を組み合わせたシステムの構築が想定される。異なるメーカー間での相互接続は重要であり、メーカーの垣根を越えた機能・規格の策定や、サービスを提供するプラットフォームの開発に期待が掛かる。
この点については、NTTが「ホームICT基盤」を活用したホームネットワーク構築に乗り出し、パナソニック電工、シャープ、富士ゼロックス、NEC、バッファローの5社と実証実験を開始している。ホームICT基盤は、家庭やオフィスの家電機器をインターネットに接続するためのプラットフォームであり、「安心・安全」をコンセプトとしている。また、総務省などが主体で次世代ホームネットワークの公開実験を定期的に実施しており、メーカー、通信キャリア、サービス提供事業者、大学などが幅広く参加している。
2つ目の課題は、ホームネットワークに関連した製品機能やサービスが消費者に浸透しておらず、認知度が低い点である。
例えば、国内販売されている多くのデジタルテレビにはイーサネット(LAN端子)が搭載されており、インターネットに接続すればアクトビラや「テレビ版Yahoo!JAPAN」などのポータル/メーカー独自のサービスが利用できる。この種のデジタルテレビは2009年度には4000万台以上普及しているとみられるが、実際にインターネットに接続している(したことのある)デジタルテレビは、200万台程度(約5%)と推定される(図3)。
この数値は、メーカーや販売店がデジタルテレビのネットワーク機能を十分にアピールしきれていないことに起因している。これらの機能は現状、デジタル機器やネットワークに詳しい一部のユーザー向けという認識が強い。一般消費者には価格は画質、録画機能といった分かりやすい特徴がアピールされており、製品の差別化要因にはつながっていない。
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