GoogleはSalesforce.comを買収すべきだろうか?(2/2 ページ)

» 2010年06月02日 15時29分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK
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 「Googleの場合は顧客がGoogle Appsを買いに来るのを待つという営業スタイルであるのに対し、Salesforce.comは顧客のところに売り込みに行くという古典的な営業スタイルだ」とベグネサ氏は語る。

 Googleのソフトウェアの価格が1ユーザー当たり年額50ドルであるのに対し、Salesforce.comのCRMソフトウェアの価格は1ユーザー当たり月額65ドルと、両社の価格設定が大きく異なる理由の1つもそこにある。

 これらのアプローチは相反するものだ。「一般に、買収が失敗する最大の原因は、社風の不一致だ」とベグネサ氏は話す。

 米調査会社Forrester Researchのアナリスト、シェリー・マクリーシュ氏によると、Googleが急いでSalesforce.comを買収する必要はないという。Googleは既に、Google Apps Marketplaceを通じてCRMなどの機能を提供しているからだ。

 3月9日に発表されたGoogle Apps Marketplaceは、Salesforce.comのAppExchangeと直接競合するとみられている。Marketplaceでは、サードパーティーのソフトウェア開発者がGoogle Appsと連係するアプリケーションを販売できる。

 Google Apps Marketplaceの最初のパートナーとして発表された50社の中にはSalesforce.comの名前は見当たらない。両社の関係が冷却化したのだと、うがった見方をする人もいるが、Marketplaceの連係方式は、GoogleとSalesforce.comが既に実現している連係方式と似通っている。

 「Googleはこの実験フェーズを通じて、何十億ドルという金が眠っている次の鉱脈を見つけようとしているのだ。Salesforce.comを獲得する緊急性があるとは思わない」とマクリーシュ氏は話す。「この買収は考えられないことではないにせよ、当然でも必然でもない。両社はパートナーとしてやっていける」

 米調査会社Gartnerのアナリスト、ホイット・アンドリュース氏も同様の見方をしており、Googleの企業買収は技術を獲得するためであり、市場での地位を得るためではない(YouTubeという例外もあるが)と指摘する。

 しかし同氏は「この買収はGoogleにとって、企業市場への足掛かりを即座に確保できるというメリットがあり、これをほかの手段で得るのは難しい」とも語っている。

 一方ベグネサ氏によると、Googleのエリック・シュミットCEOと同社幹部にとっては、買収資金をいつ回収できるのかという不安があるという。Salesforce.comの株価を1株86.53ドルとすれば、Googleが支払う買収金額は何十億ドル(プレミアムに応じて50億〜150億ドル)にも上る。

 「Googleがこの費用を回収できるかどうか、はなはだ疑問だ」とベグネサ氏は語り、Google AppsビジネスのためにGoogleはPostiniを買収するのに6億2500万ドルの資金を投じたが、同事業が稼ぎ出しているのは毎年1億ドル程度だと指摘した。

 もちろん、GoogleがSalesforce.comを獲得すれば、Microsoft、SAP、OracleなどのSaaS型CRMのプロバイダーとの競争力が高まるだろう。Googleがどんな企業とも十分渡り合えることは実証済みだ。

 最近では、Web上でGoogleが顔を出していない分野は少ないくらいであり、検索とWebサービスの巨人Googleは、企業買収にもためらいを示さなくなった。

 「今では、IT業界にいる企業はすべて、Googleとの競争にさらされている」とアンドリュース氏は話す。「Googleの競争相手でない企業は1社もない。こと競争となれば、企業はどんな手段でも用いるのが常だ」

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