AppleのジョブズCEO、基調講演で新型iPhoneを語る

Appleのスティーブ・ジョブズCEOは「iPhone 4」を「われわれの最も精密で最も美しい製品の1つ」と語るが、流出した試作機のニュースを知っている人には驚くべき発表はなかった。

» 2010年06月08日 14時02分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 米Appleのスティーブ・ジョブズCEOは6月7日、サンフランシスコで開幕した同社の開発者会議「2010 Worldwide Developers Conference(WWDC)」で基調講演を行い、待望の新型iPhone「iPhone 4」を発表した。この端末には、消費者向けスマートフォン市場での優勢を維持したいとの同社の期待が込められている。Appleは目下この市場において、カナダのRIM(Research in Motion)のBlackberryといった従来からの競争相手のほか、猛烈な追い上げを見せるGoogle Android陣営との競争にも直面している。

 いつものタートルネック姿で登場したジョブズ氏はまず、iPadが販売台数200万台を突破してなおも売れ続けていること、電子書籍アプリ「iBooks」の新機能、オンラインDVDレンタル「Netflix」のiPhone対応などについて語ったのち、いよいよ、多くの向きがこの日のメインイベントと考えている本題、つまり新型スマートフォン「iPhone 4」の詳細の発表へと話を進めた。新型iPhoneの特徴として発表されたのは、より大きくなったバッテリー、より薄くなった筐体、Apple製のA4プロセッサの搭載、ビデオ通話用の前面カメラ、500万画素に強化され、裏面照射型センサーが搭載されている背面カメラなど。この端末の徹底的な改良を期待していた向きはがっかりはしていなかったようだ。一方、ここ数カ月の間に流出した新型iPhoneのプロトタイプについて既にニュースで情報を得ていた向きにとっては驚くべき内容でなかったことも確かだ。

 WWDCのライブリポートによると、ジョブズ氏はこの新しいスマートフォンについて、「初代iPhoneからの最も大きな飛躍だ」と語り、さらに、「この製品は紛れもなく、われわれがこれまでに開発してきた中でも最も精密で最も美しい製品の1つだ」と続けている。大型化したバッテリーの駆動時間は、通話は7時間、音楽再生は40時間、動画再生は10時間、3GでWebを閲覧する場合は6時間、WiFiを利用する場合は10時間、待機時間は300時間という。

 さらに新端末は、視覚面が充実しているようだ。iPhone 4のカメラは720p/30fpsでのHD動画撮影に対応し、ディスプレイには解像度326ppiの「Retina Display」が採用されている。ジョブズ氏はiPhone 4のディスプレイがいかに鮮明かをiPhone 3GSのディスプレイと比較して紹介する際、冗談めかして、「一度Retina Displayを使ったら、もう普通のには戻れない」と語ったということだ。

 またiPhone 4は3軸ジャイロスコープを搭載し、正確な位置情報を提供できる。ジャイロスコープは例えば弾道ミサイルなどの非消費者向け製品では既に一般的な技術だが、今回それがスマートフォンに組み込まれたことで、今後は例えば、カメラの手ブレの防止の強化、ジェスチャーユーザーインタフェース、GPSの推測航法支援など、多様な用途に採用の可能性が広がりそうだ。

 さらにジョブズ氏は、Wi-Fiを使ったビデオ通話機能「FaceTime」を発表した。FaceTimeを使用中は双方の映像を表示しながら通話でき、画面は横表示にも対応する。ジョブズ氏によると、この機能を3Gでも提供すべく、Appleは目下キャリア各社と相談中という。

 iPhone 4の発売は6月24日。白と黒の2モデルが提供され、AT&Tと2年契約をした場合の価格は、16Gバイトモデルが199ドル、32Gバイトモデルは299ドルとなる。

 なおiPhone 4向けのOSはこれまで「iPhone OS 4」と呼ばれていたが、今回のWWDCで名称が「iOS4」に変更された。iOS4は1500もの新しいAPIのほか、マルチタスク対応などの新機能を備える。そのほか同プラットフォームで注目すべきは、新モバイル広告プラットフォームの「iAd」だ。iAdにより、開発者は自分が開発したアプリケーションの中にモバイル広告を簡単に埋め込むことができる。

 「皆さんのアプリケーションには必ず市場があるはずだ」とジョブズ氏は聴衆に語った。WWDCの聴衆の中には、iPhoneやiPad、Mac向けのプログラムの開発に関するテクニカルセッションのためにWWDCに参加している開発者も数多く含まれている。

 Appleのプレゼンテーションはその完成度の高さで知られているが、今回は幾つかのアクシデントに見舞われた。例えば、Web閲覧機能のデモの際にはNew York Times紙のアプリをロードできないという失敗があった。どうやら原因は会場内であまりに多くの端末が無線接続を利用していたためと見られ、ジョブズ氏は「まったく、なんてことだ。ひどい」と幾度か不満を口にしたという。

 USA Todayによると、このとき、聴衆の中から「Verizonを試せば!」との声が飛んだという。もっとも、ジョブズ氏がアクセスしようとしていたのは3GではなくWiFiネットワークの方だったため、この失敗を米国内のAppleの独占的キャリアのせいにするのはどうやら見当違いだったようだ。

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